営業秘密保護・知的財産 特許権について

2021/01/26
営業秘密保護・知的財産 特許権について

特許権

まず、「特許権」というものを考えるうえで、重要なことは、「特許権」というのは、特許出願をし、査定を経て登録されなければ発生しない権利であるということです。すなわち、いくら重要な発明をしたとしても、特許庁に登録されなければ「特許権」として権利を主張することができないのです。

さて、その「特許権」の対象は「発明」であり、「発明」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」(特許法2条1項)と定義されています。

この定義から、実際に存在する「発明にあたりそうなもの」について、特許権の対象である「発明」にあたるかどうか、及び特許権として登録できるか、を判断することは容易ではありませんが、以下では「発明といえるための要件」「特許権として登録するための要件」の2つについて概要をご説明します。

「発明といえるための要件」

1.「自然法則の利用」

発明といえるためには、「自然法則を利用したもの」であることが要求されています。スポーツのルール等の人為的なルール、数学上の法則等の純然たる学問上の法則等は、除外されます。

この「自然法則を利用したもの」であるか否かが問題となるものとして、コンピュータソフトウェアの問題があります。なぜなら、数学的な計算手順(いわゆるアルゴリズム)そのものは、学問上の法則であって、何ら自然法則を利用するものとはいえないからです。

もっとも、特許庁が公開している特許・実用新案審査基準によっても、「ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されている」とは、ソフトウェアがコンピュータに読み込まれることにより、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はその動作方法が構築されることをいう、とされています。そして、上記使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はその動作方法は「自然法則を利用した技術的思想の創作」ということができるとされています。

すなわち、「ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されている」場合には、当該ソフトウェアは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ということができるとされているのです。

2.「技術的思想性」

発明といえるためには、「技術的思想性」が要求されています。したがって、技量(コツ)、演奏技術、スポーツの技等は、発明といえません。

3.「創作性」

発明といえるためには、「創作性」が要求されています。創作性が認められるためには、既存のものを「発見」するだけでは足りないといわれていますが、「発見」と「発明」の区別といっても、微妙であり、この要件で「発明」か否かを判断することはほとんどありません。むしろ、既存のものか否かについては、後に「特許権として登録するための要件」で出てくる「新規性」や「進歩性」の要件の検討の方が重要です。

4.「高度性」

発明といえるためには、「高度性」が要求されています。もっとも、「高度性」の要件の検討はあまり重要でなく、実用新案の対象である「考案」と区別するためのものであると理解されています。

「特許権として登録するための要件」

1.産業上の利用可能性(特許法29条1項柱書)

産業上の利用可能性があることが、特許権として登録を受けるための要件です(特許法29条1項柱書)。このことは、特許法の目的(特許法1条)が、「産業の発達に寄与すること」にあることから理解できるものだと思われます。

この要件に関する問題として、医療は、産業ではないと解釈されており、病気や怪我の診断方法や治療方法についての発明は、「産業上の利用可能性」がないとして、特許能力がないとされています。

2.新規性

既存の技術や物に対して特許権が認められないことについては、当然のこととして広く認識されていると思われますが、既に知られているとはどのようなことか、すなわち発明が「新規性」を有しているとはどういうことかということについて、特許法では、29条1項において「新規性」を喪失する事由を3つ列挙し、これに該当しない発明には「新規性」が認められるという構成になっています。

① 公知(特許法29条1項1号)
 特許出願前に公然に知られてしまった発明は、新規性を喪失しており、特許能力が認められません。公然に知られてしまっているといえるかどうかは、具体的事案に即して判断されることになり ます。公知の発明にあたるか否かの判断は、具体的な事例を基にご相談されるのが一番良いと考えます。

② 公用(特許法29条1項2号)
 特許出願前に公然と実施されていた発明には、特許は付与されません。この公用と前出の公知の区別は困難ですが、一般公衆の知りうべき状態に置かれたこと、その状態で使用されたことで公用となるといわれています。

③ 刊行物記載(特許法29条1項3号)
 特許出願前に広く頒布される刊行物に記載された発明には、特許は付与されません。国内における刊行物に限らず、世界中で頒布された刊行物に記載されている発明が対象となっております。

3.拡大された範囲の先願(公知の擬制)(特許法29条の2)

先願が公開されている場合、後願が先願の公開前であったとすると、公知とはいえないが、先願の明細書又は図面に記載されている発明又は考案と同一の出願は新規性がないとして拒絶されることになります。公知とはいえないものの、公知が擬制される(公知とみなされる)のです。

4.進歩性(特許法29条2項)

新規性のない発明から同業者が容易に発明することができる発明を「進歩性」のない発明と呼んでおり、特許法29条2項に基づき特許権が付与されないことになります。

進歩性の有無については、争いになることが多く、多数の特許訴訟に関する裁判例が存在します。

以下では、進歩性の有無を判断するうえで、よく用いられる類型化について列挙します。

  1. (1)寄せ集めの発明
  2. (2)置換・転用発明
  3. (3)用途発明
  4. (4)選択発明
  5. (5)数値・形状等の限定発明
  6. (6)化学物質発明

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