離婚相談 離婚原因について

2021/06/04
離婚相談 離婚原因について

離婚原因について

不貞行為(民法770条1号1号)

不貞行為とは、配偶者がいる者が異性と性交することをいいます。一般的には、「浮気」といわれているものです。

もっとも、一般的に「浮気」といわれる行為であっても、ここでいう「不貞行為」にはあたらないことがあります。具体的には、ここでいう「不貞行為」は、あくまで性交渉のことですから、デートをしたり、キスをしただけでは、「不貞行為」にはあたりません。性交渉以外のデートやキス等は、慰謝料請求の対象となったり、民法770条1項5号に定められている「婚姻を継続しがたい重大な事由」が認められる事情にはあたりますが、民法770条1項1号の「不貞行為」にはあたらないのです。

離婚訴訟においては、離婚原因として不貞行為の主張をすることは少なくありません。相手方が不貞行為を認めている場合には立証の問題はありませんが、そうでない場合には、不貞行為の証拠を収集する必要があります。例えば、不貞相手と配偶者との現場写真、メール、日記等の証拠を収集しておく必要があります。もっとも、不貞行為すなわち性交渉の存在まで立証できない場合であっても、配偶者と異性との親密な交際を立証し、他の事情とも併せて、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民770条1項5号)の存在を立証し、離婚請求をすることもあり得ますので、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

なお、この「不貞行為」は、継続的なものである必要はなく、一時的なものであっても、「不貞行為」にはなります。

また、同性愛は、ここにいう「不貞行為」にはあたりませんが、民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」にはなり得ると解されています。

以上述べてきたとおり、「不貞行為」は、離婚原因にあたりますが、「不貞行為」が発覚した場合には、離婚請求とともに慰謝料請求がなされるケースが多いです。

この慰謝料請求は、「不貞行為」をした配偶者と一緒に、「不貞行為」の相手方に対してもすることができます。この二人、すなわち「不貞行為」をした配偶者「不貞行為」の相手方は連帯して損害賠償責任を負うことになるのです。

簡単に説明しますと、「不貞行為」を行った配偶者は、貞操義務に反して不法行為をしたことで損害賠償責任を負います。また、「不貞行為」の相手方(結婚しているかどうかに関係なく)は、婚姻共同生活の平穏の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害したものとして、不法行為責任を負うことになります。

もっとも、婚姻が既に破綻していた場合には、因果関係がないから、損害賠償請求ができません。

悪意の遺棄

「悪意の遺棄」とは、正当な理由のない同居・協力・扶助義務の放棄をいいます。

「悪意」とは、単にある事実を知っているということではなく、倫理的に非難されることを意味します。一配偶者が他方配偶者や子らを放置して、家を出て、生活費の負担もしないような場合がそれに該当します。

このように「悪意」に避難の要素があるためか、実務上は、相手方の有責行為を強調するために、「悪意の遺棄」が主張されることが少なくありません。

もっとも、その多くは、別居の原因が一方配偶者のみにあるとはいえないケースであり(正当な理由であるとはいえない)、他方で、後述のとおり、一定期間の別居は、それのみで「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとされる場合があるため、最近では、「悪意の遺棄」が離婚原因と認定される例は少ないです。

実務上、「悪意の遺棄」を離婚原因とするのが適当な場合があります。被告の住居所が不明であるとして公示送達により訴状を送達する事案に多いですが、相手方の生死が不明とはいえないものの、音信が途絶えて3年以上別居が継続している場合があります。それは、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民770条1項5号)に当たり得ますが、当事者が再婚を予定している場合には戸籍先例では、「悪意の遺棄」を離婚原因とする離婚請求を認容する判決の理由中で、3年以上の継続した別居が認定されているときには、父性の混乱はありませんので、再婚禁止期間内であっても、新たな婚姻の届出を受理するという取扱いをしています。

このような場合には、3年以上の継続した別居がある旨の事実を判決理由中で認定したうえ、「悪意の遺棄」による離婚請求を認定しています。

3年以上の生死不明(民770条1項3号)

「3年以上の生死不明」は、生死不明という客観的状況が3年間継続していることを意味し、生死不明の原因を問いません。単なる行方不明や音信不通では足りず、死亡の可能性が相当程度あることが必要です。

生死不明の継続が3年に満たない場合や、単なる行方不明や音信不通の場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民770条1項5号)に該当することがあります。

生死不明が7年以上であると失踪宣告の要件を具備します(民30条1項)。失踪宣告によって死亡したとみなされるので(民31条)婚姻は解消されますが、その後、生存が判明して、失踪宣告が取り消された場合(民32条1号)には、前婚が復活して重婚状態にあり、後婚には取消事由があることになってしまいます。

相手方が生死不明であるので、調停を前置きすることなく、離婚訴訟が提起され、被告の住居所が不明であるとして公示送達によって訴状が送達されたうえ、原告が離婚原因を立証することになります。

強度の精神病(民770条1項4号)

「強度の精神病」とは、単に精神病に罹患いるだけでは足りず、それが強度のもので回復が困難な状況にあることを要します。精神病に罹患すること自体は本人に何ら責任はないので、破綻主義に基づく離婚原因の典型であります。

精神病であるかどうか、それが強度のもので回復が困難な状況にあるかどうか、それが強度のもので回復が困難にあるかどうかは、医師等の専門的な判断によるべきであります。アルツハイマー病は、「精神病」ではありません。(もっとも、民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当することはあります。)

判例は、「強度の精神病」に該当する場合であっても、民法770条2項を適用して、「諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的な方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込みについた上でなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて、離婚の請求は許さない注意であると解すべきである。これに対しては、批判的な学説も多いが、公的、社会的な支援体制が必ずしも十分ではない現状では、一方配偶者の婚姻から解放される利益と精神病に罹患した本人の保護と総合考慮するのが相当であろう。」

そこで、実際の訴訟においては、生活費や療養費の負担や配偶者に代わる保護者の存在、療養受入先等の療養看護体制が十分かどうかが審理の重要なポイントとなり、原告が具体的裏付けをもって、それらを立証する必要があります。単に罹患しているのみでは、民法770条1項4号には該当しないものの、「婚姻を継続し難い重大な事由」になる余地はありますが、「強度の精神病」の場合に上記の具体的な方途を要求する趣旨は、この場合にも同様にあてはまり、具体的な方途に準ずるような措置がもとめられます。(なお、この場合、あくまで、同項5号の事由による離婚請求は同条2項による裁判棄却の対象ではないことに留意する必要があります。)

一方配偶者が、精神証に罹患していることを理由として、成年後見開始の審判を受けて、成年後見人になっているときには、他方の配偶者は、成年後見人に選任されている場合には、成年後見監督人を被告として離婚訴訟を提起することができます。(同条2項)

婚姻を継続し難い重大な事由(民770条1項5号)

「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、いわゆる婚姻共同生活が破綻し、その修復が、著しく困難な事由をいいます。これは、主観的には、婚姻当事者双方が婚姻を継続する意思がないこと(破綻の主観的要素)と客観的には婚姻共同生活の修復が著しく困難であること(破綻の客観的要素)を意味しますが、そのいずれかが認められる場合には、婚姻は破綻したものとして、離婚請求は認容されます。配偶者の一方に有責行為があるかどうかは関係がありません。

もっとも、このことは、婚姻の客観的要素において、有責行為の有無が考慮されることを否定するものではありません。

「婚姻を継続し難い重大な事由」として、これまでの裁判例で問題になった具体的例を概観します。

  • ① 暴行・虐待配偶者に対する暴行、虐待が民法770条1項5号の事由に該当することは異論はない。なお、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(平成13年法律第31号)が制定され、配偶者からの暴力により、生命又は身体に重大な危害を受けるおそれがある場合には、被害者の申立てによって裁判所から保護命令が発令される(配偶者暴力10条)。
    保護命令事件の記録は、当事者が閲覧のうえ、離婚訴訟の証拠として提出され、暴力の有力な認定資料となることが多い。
  • ② 重大な侮辱「重大な侮辱」は、旧民法でも離婚原因とされていた(813条5号)直接配偶者にたいしてされることはもとより、第三者に対してされるものも含まれる。
  • ③ 不労・浪費・借財等就労能力があるにもかかわらず、就労意欲がなく稼働しないこと、浪費をすること、多額の借金をすることは、そのために婚姻共同生活を維持することが困難になる場合には、5号の事由になり得る。
  • ④ 犯罪行為・服役配偶者に向けられた犯罪行為やそれによる服役が5号の事由に該当することは異論はないがそうではない犯罪行為や服役によっても、長期間にわたり婚姻共同生活が不可能にになり、他方配偶者の名誉に重大な影響を与える場合には、5号の事由になる。
  • ⑤ 疾病・障害回復困難な精神病に当たらない疾病やその他の疾病も、5号の事由に該当することがある。性的不能も同様である。
  • ⑥ 宗教活動夫婦間においても、信教の事由は尊重されるべきであるが、家庭を顧みることなく、宗教活動に没頭し、婚姻共同生活を維持できない場合には、5号の事由に該当することがある。
  • ⑦ 親族との不和親族との不和は、それだけでは婚姻破綻の原因になりにくいが、一方配偶者がその親族に加担したり、配偶者が親族との不和を解消する努力を怠った場合に、5号の事由に該当することがあり得る。
  • ⑧ 性格の不一致夫婦であれば、多少の性格の不一致はあり、お互いにそれを解消し克服する義務があるから、性格の不一致そのものが直ちに5号の事由に該当するものとはいえない。他の要素と相まっても5号の事由にあると認定されることはある。離婚原因として、性格の不一致を主張する場合には、他に破綻の真の原因があり、それに仮託されることがあるので、真の原因を把握するように努める必要がある。

「婚姻を継続し難い重大な事由」は、規範的要件事実であり、総合的な評価であるので、離婚請求をする側が評価根拠事実を主張立証する必要があります。これに対し、離婚請求をされた側が評価障害事実を主張立証する必要があります。

総合的な評価であるか、勢い、夫婦の機微に関する事項はもとより、夫婦あるいはその親族の人格攻撃とも思われる主張をすることが少なくありません。しかしながら、婚姻破綻に直結するような直近の事実がなければ、評価根拠事実たり得るのか疑問です。

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