離婚相談 親権と監護権の関係 / 親権者の指定 / 面会交流

2021/06/04
離婚相談 親権と監護権の関係 / 親権者の指定 / 面会交流

親権とは。親権と監護権の関係

親権には、未成年の子供の財産を管理し、身上監護をする権利が包含されているので、監護権は親権の一部であるといえます。

そして、原則的には、親権者と監護権者は一致するのが望ましいと考えられています。

しかし、「子供が幼く母親を監護権者とするのが適当であるが、財産管理については父親に任せる方が適当である」ということも例外的にあり得ることから、親権者と監護権者が別々に定められることもあります。

子の親権者の指定

子の親権者の指定

離婚する夫婦の間に、未成年の子がいる場合、

<当事者間の話し合いが成立すれば>
 協議に基づいて親権者の指定がなされます。

<当事者間の話し合いがつなかければ>
 家庭裁判所の判決もしくは審判で親権者の指定がなされます。

判決もしくは審判で親権者を指定する場合

家庭裁判所は、離婚の訴えを認める判決において、離婚する夫婦間に未成年の子がいる場合、申立てがなくとも職権で親権者の指定をしなければなりません(民法819条2項、人事訴訟法32条3項)。

このように家庭裁判所が子の親権者を指定するのは、
「夫婦が離婚する場合、婚姻しているときのように夫婦が共同で子の親権を行使することは事実上困難であり、かつ子の福祉のためにベストではない」
との考え方に基づいています。

また、家庭裁判所は、当事者から申立てがある場合には、子の監護をすべきもの(監護権者)について定めらなければならないとされています(民法771条・766条、人事訴訟法32条1項)。ですので、法律上は、親権者と異なる者を監護者を指定することも想定されていますが、家庭裁判所がそのような結論を採用することは稀です。

親権者に適切である者を判断する基準

親権者・監護者の決定は、子の利益(民819条6項)及び福祉を基準として判断されることになります。

問題は、父母のいずれを親権者・監護者とするかが子の福祉に適うかです。それをどのように判断するかといえば、以下の基準を用いて、あらゆる事情を考慮して、総合的に判断することになります。

【親権者指定の判断の際の諸基準】

  1. 1 母性優先の基準母性優先の基準とは、読んで字のごとくでありますが、とくに乳幼児については、特段の事情がない限り、母親の監護に委ねることが、子の福祉にかなうという考え方です。
    もっとも、母親といっても、生物学上の母親かどうかが問題ではなく、子に対して、母性的な役割を果たしている者が適切であるという観点が必要であり、父と母のうちどちらが、子との心理的な関係を緊密に形成しているかについても重視すべきであるとの見解も有力です。
  2. 2 継続性の基準継続性の基準とは、子の養育監護をする者が変更になることは、子の心理的な不安定をもたらし、子の健全な成長の妨げになりうることから、現実に子を養育監護している者を離婚後も親権者として指定することが望ましいとの基準です。もっとも、現実に子を養育監護している親が子を違法に奪取した場合に、親権者の適格性に問題があるとされた事例もあります。
  3. 3 子の意思の尊重の基準子の意思の尊重の基準とは、読んで字のごとくではありますが、子の意思を尊重すべきであるという基準です。
    子の意思が尊重されるようになる年齢については、一律に年齢で判断できるものでないことも事実ですが、おおむね10歳前後から意思を表明する能力に問題がないと判断されています。
    なお、子の意思の尊重といっても、「子の言葉」をそのまま「子の意思」と判断できるかどうかには、慎重な検討が必要となります。とくに、両親が親権を争っている場合に、「子が言葉にした子の意思」が必ずしも真意とは言えないことがあるからです。
  4. 4 兄弟姉妹の不分離の基準兄妹姉妹の不分離の基準とは、とくに幼児期の兄弟を分離すべきではないという基準です。もっとも、この基準は、母性優先の基準や継続性の基準、子の意思の尊重の基準からすれば補充的なものにとどまります(上記の他の基準の方が重視されることになります)。

面会交流

面会交流とは

面会交流とは、夫婦が離婚するにあたって、監護権者ではない(子供を引き取って一緒に生活していない)親が、子供と面会したり、宿泊を伴って交流することです。

この面会交流は、子どもの健全な生育のために、監護権者でない親による教育、監護が必要であることから認められるものです。

監護権者でない親は、監護権者に対して、監護権者として適切な処置、すなわち子どもの生育に有益な機会を与えるように求めることができ、監護権者はそれを拒否できないと理解されています。

面会交流の具体的な内容

面会交流の具体的な内容については、離婚後にトラブルになることがないように、できるだけ離婚協議書を作成する段階で、以下のような項目について具体的に決めておくといいと考えます。

決めておいた方が良い項目

  • 面接の頻度(月に2回、又は年に15回等)
  • 1回の面接時間(何時から何時まで)
  • 宿泊の可否
  • 面会交流する場所
  • 子どもの受渡し方法
  • 実際に会う面会交流以外に、電話やメール等のやりとりをどうするのか
  • 子どもの学校行事への参加をどうするか
  • 子どもへの誕生日のプレゼントや入学祝などをどうするか

面会交流に関する調停・審判手続

面会交流及びその他交流について、父母等の間に協議が整わない場合には、その面会交流の調整を求める調停を申し立てすることができます(民法766条2項参照)。

そして、調停が成立しない場合には、家庭裁判所が審判によってその内容を定めることとなります。

協議や審判に当たって、考慮すべき最大の事項は、「子の利益に合致するか否か」です。

なお、正式に離婚に至っていないものの、夫婦が別居しており、他方の親が子供と会わせない状況が続いている場合においても、子供に会うことができていない親は、家庭裁判所に面会交流権の調停・審判を申し立てることができます。

面会交流が制限されたり、停止されたりする場合がある

面会交流は、面会交流権ともいわれ、監護権者でない側の親の権利であるかのような理解がされています。

この点、権利であるという理解は必ずしも誤りではないのかもしれませんが、そもそもこのような権利が認められているのは、「監護権者でない親のため」ではなく、「子供のため」であることを忘れてはいけません。

そこで、面会交流が「子供のため」にならない場合、難しい言い方をすると、「この福祉に反する場合」には、面会交流は制限されたり、停止されたりします。

例えば、「面会交流中に子供に対して監護権者の悪口を言い立てる場合」「子供に対して暴力をふるったり不適切な行動があった場合」「子供を監護権者のもとに返すことなくそのまま連れ去ろうとした場合」等に、子供に与える悪影響の程度等諸般の事情を勘案して、面会交流を制限されたり、禁止されたりすることがあります。

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