離婚相談 慰謝料請求/不貞行為に対する慰謝料請求

2021/06/04
離婚相談 慰謝料請求/不貞行為に対する慰謝料請求

離婚に伴う慰謝料請求について

どのような場合に離婚に伴って配偶者に対して慰謝料請求をすることができるでしょうか?

慰謝料とは、離婚による精神的苦痛に対して支払われるお金のことです。

離婚することになった原因を作った配偶者に対して、他方の配偶者が慰謝料の請求をすることができます。慰謝料は、離婚の際に必ず支払われるものではありません。どちらかが一方的に悪いわけではない場合には、慰謝料請求はできません。また、原則として離婚が成立してから3年を経過してしまうと、時効により慰謝料を請求できなくなってしまいます。

離婚慰謝料の額(いくらくらいが相場でしょうか)

慰謝料の金額はさまざまな事情を考慮して決定されます。
 ・離婚の原因となった行為(相手方の有責性の態様)
 ・精神的苦痛の程度
 ・結婚していた期間の長さ
 ・相手方の収入
 ・未成熟の子の有無
等により大きく異なります。

裁判上の慰謝料は、100万円から300万円が相場と言えますが、大きく上回ることも下回ることもあります。慰謝料がいくらになるのかは、裁判所に納得してもらえるような主張ができるかどうかが重要になってきますので、専門家である弁護士に相談するのが得策です。

配偶者と不倫した相手方に対する慰謝料請求について

あなたの配偶者が不倫した場合、あなたは配偶者の不倫相手に対して慰謝料請求をすることができます。

不倫相手があなたたち夫婦が結婚していることを本当に知らなかったのであれば別ですが、そうでなければあなたの配偶者と不倫相手とは、共同不法行為者として、あなたに対し連帯して損害賠償をする義務を負うことになるのです。

この場合の慰謝料の金額ですが、
 ・不倫によって離婚に至ったか
 ・不倫の頻度、期間
 ・不倫が始まった経緯
 ・婚姻期間
 ・相手方の収入
等様々な要素を考慮して決定されることになります。

不貞行為に対する慰謝料請求

① はじめに

婚姻関係にある夫婦は、お互いに貞操義務を負っていると解釈されています。

この義務を直接定めた民法の明文規定はありませんが、不貞行為が裁判上の離婚原因となることを定めた民法770条1項1号が存在することが、夫婦の貞操義務の存在を前提としていると解釈されているのです。

この夫婦相互間の貞操義務に違反して、どちらか一方が他の異性と性的な関係を持った場合、一方の配偶者は、不貞行為をした相手方に慰謝料の損害賠償を請求することができます

この場合、浮気相手に対しても、浮気をした配偶者とともに、慰謝料の請求をすることができます<(法律的には、浮気をした配偶者と浮気相手が連帯して慰謝料の支払う義務があるということになります)。

② そもそも「不貞行為」とは何か

そもそも「不貞行為」とは何でしょうか?

そんなの「浮気」のことに決まっているじゃないですか、という声が聞こえてきそうですが、どこまでから「浮気」と捉えるのかということについても個人差があると思います。

法律用語としての「不貞行為」(法律の条文としては、民法770条の「離婚原因」の一つとして登場します)というのは、「配偶者がいる人が配偶者以外の異性と性的な関係を持つことである」と定義されるものと理解されています。

すなわち、「不貞行為」というのは、いわゆる定義があいまいな浮気とは違い、性的な関係を持った場合のことをいうのです。

③ 慰謝料請求ができる期間

不貞行為があった場合に請求される慰謝料というのは、法律的に言うと「不法行為に基づく損害賠償請求権」という性質のものですので、この慰謝料請求をすることができる期間というのは、3年間ということになります。

もっとも、不貞行為に対する慰謝料請求という場面においてはよくある話であると思われるのですが、不貞行為があった時から3年以上経っていても請求できる場合があります。

具体的には、相手方(妻から見れば夫、夫から見れば妻)が不貞行為をしていることが発覚してから3年経っていない場合、もしくは不貞の相手方が判明してから3年経っていない場合(浮気相手がどこの誰だか、長い間全然わからなかったが、のちに発覚した場合)には、不貞行為があった時から3年以上経っていても慰謝料を請求できる場合があります

不法行為の時効について、「損害および加害者を知った時」から3年間を経過すると時効になってしまうことから、上記のようなこととなるのです。

より簡単にいえば、「請求しようと思えば請求できる状態」のまま3年間が経過すると時効による債務の消滅を主張されてしまう可能性がある、ということになります。

④ 慰謝料請求できる金額の相場

不貞行為に対する慰謝料請求というのは、不貞行為によって受けた「精神的苦痛」を金銭的に賠償させるということですので、具体的な事案ごとに異なることは当然のことです。

っとも、「精神的苦痛」=どのくらい傷ついたのかということについては、人によって千差万別ということではあるものの、当事者ではない裁判官が判断するうえでは、以下のような事情を考慮して、慰謝料の額について判断が下されているといわれています。

  • 「夫婦関係が良好であったのか、それともすでに破綻の危機にあったのか」夫婦関係が良好であったにもかかわらず不貞行為によって夫婦関係に影響が出た場合など、夫婦関係が良好であった方が、慰謝料が高額になる方向で考慮されることになります。
  • 「婚姻期間」婚姻期間が長ければ長いほど、慰謝料が高額になる方向で考慮されることになります。
  • 「不倫相手との肉体関係を持った回数」不倫相手との肉体関係を持った回数が多ければ多いほど、大幅にとは言えませんが、慰謝料が高額になる方向で考慮されることになります。
  • 「不倫相手との交際態様、交際期間」不倫をした相手方が積極的に不倫相手と交際を開始し、頻繁にかつ長期にわたって交際している方が、慰謝料が高額になる方向で考慮されることになります。

⑤ どのような証拠があれば不貞行為が認められるのか?

まず前提となる認識として、不貞行為は、訴訟においては慰謝料請求をする側が立証しなければなりません。

したがって、訴訟の前段階で請求を行い、交渉をするにあたっても、不貞の証拠があるのかないのか、もしくは確実な証拠なのか、認められるか否か微妙な証拠なのかによって、交渉に臨む基本的なスタンスも変わってきます。

⑥ 婚姻関係破綻後の不貞行為

婚姻後何らかの理由で夫婦関係が悪化したが、いまだ離婚には至っていない夫婦も存在します。

そのような夫婦の一方が不倫をした場合にも、通常通り不貞行為に基づく慰謝料請求が認められるのでしょうか?

このようなケースについては、最高裁判所の判例があるのでご紹介します。

<最高裁判所平成8年3月26日判決>

最高裁で判決が下された事案の概要は、甲と乙が婚姻関係にある時に、乙が丙 と不倫をし、肉体関係を持ったのだが、その不倫をした時には甲と乙との婚姻関係はすでに破綻していたというものである。

このような事案の下で、浮気相手である丙は、甲に対して慰謝料の支払い義務を負うかが争われ、最高裁は、特段の事情のない限り、丙は責任を負わないと判断しました。

つまり、「特段の事情」すなわち、よっぽど特別なことがない場合、浮気相手である丙さんは法的責任を問われないということになります。

参考までに最高裁の判旨を以下に、そのまま引用します。

「甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わないものと解するのが相当である。

けだし(※)、丙が乙と肉体関係を持つことが甲に対する不法行為となるのは、それが甲の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるからであって、甲と乙との婚姻関係が既に破綻していた場合には、原則として、甲にこのような権利又は法的保護に値する利益があるとはいえないからである。」

 ※ 「けだし」というのは、なぜなら、とほぼ同義と捉えて差し支えないと思います。

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