損害賠償命令とは
損害賠償命令とは、以下の対象犯罪についての刑事事件の裁判に付随して、本来民事裁判で請求すべき損害賠償請求について、刑事事件を担当した裁判官が、刑事被告人に被害者もしくは被害者遺族に対して、損害賠償をするように命令をする制度です。
裁判は、大きく分けると、「刑事事件」と「民事事件」に分けられます。
「刑事事件」は、被告人が犯したとされる犯罪について、有罪か無罪か、有罪の場合はどれくらいの重さにするかを決める手続です。
ですから、被告人が被害者もしくは被害者遺族に対して、損害賠償をどうするかすなわちお金をいくら払ってつぐなうか、ということを決める仕組みにはなってません。
しかし、一定の犯罪類型(以下に記載する対象犯罪)については、犯罪被害者もしくは犯罪被害者の遺族が裁判所に申立をすることにより、刑事事件を担当した裁判官が、損害賠償について、「いくら支払え」という命令を下すことができるようになりました。
これが、「賠償命令」の制度です。
対象犯罪の類型
- ① 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪又はその未遂罪
- ② 次に掲げる罪又はその未遂罪
- イ 刑法 (明治四十年法律第四十五号)第百七十六条 から第百七十八条 まで(強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦)の罪
- ロ 刑法第二百二十条 (逮捕及び監禁)の罪
- ハ 刑法第二百二十四条 から第二百二十七条 まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等)の罪
- ニ イからハまでに掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(前号に掲げる罪を除く。)
対象犯罪の具体例
殺人事件、殺人未遂事件、傷害致死事件、危険運転致死事件、強姦事件、強制わいせつ事件、監禁事件、誘拐事件など
過失犯(業務上過失致死傷罪,自動車運転過失致死傷罪)は対象となりません。
したがって、例えば自動車事故の被害者遺族などは、賠償命令申立により損害賠償を得ることはできません(なお、業務上過失致死傷罪,自動車運転過失致死傷罪は、被害者参加については対象となります。)
このように、s賠償命令の申立ができる犯罪と刑事事件への被害者参加ができる対象犯罪とは異なりますので注意が必要です)。