会社の自己破産 未払賃金の立替え払い制度

2021/01/27
会社の自己破産 未払賃金の立替え払い制度

未払賃金の立替え払い制度

 

 
会社が自己破産申し立てをする場合、従業員の方の給与の未払いを抱えたまま倒産してしまうということがあります。
 
そのような場合、破産法のルールでいくと、給与債権は、破産手続開始決定より3か月前の給与に相当する金額については財産債権といって、一般の債権よりも優先的に配当がなされるものの、配当原資(会社財産を換価した結果、債権者へ配当することができる金銭)よりも多額の租税債権等の財団債権が存在する場合等、従業員さんの給与債権は全額支払われないこともあります。
 
また、破産手続きにおいて配当がなされるのは最終段階であることが多いことから、仮に給与債権全額に対する配当がなされたとしても、本来給与が支払われるべき時期よりもかなり遅くなってしまうということになりかねません。
 
もっとも、これについては、賃金の支払の確保等に関する法律(いわゆる賃確法)という法律によって、一定の条件を満たした給与債権は、独立行政法人労働者健康安全機構から、未払い賃金の立替払いを受けることができます。
 

立替払いを受けるための要件

事業者(会社)に関する要件

  • ①会社が労災保険の適用事業者として、1年以上の期間、労働者を使用して事業を行っていたこと
  • ②「破産手続、民事再生手続、特別清算手続、会社更生手続等の開始決定がなされた」(法律上の倒産)か、もしくは、「事業活動に著しい支障を生じたことにより、労働者に賃金を支払えない状態(事実上の倒産状態)になったことを労働基準監督署長が認定した場合」

 

労働者に関する要件

  • ③立替払いを受ける労働者が労働基準法上の労働者といえること
  • ④立替払いを受ける労働者が、開始決定(法律上の倒産)の日もしくはから労働基準監督署長の認定(事実上の倒産)の日の6か月前から2年以内に退職した者であることが必要です。
  • ⑤立替払いを受ける労働者が、開始決定(法律上の倒産)の日もしくはから労働基準監督署長の認定(事実上の倒産)の日から2年以内に立替払いの請求をすることが必要です。

 

立替払いの対象となる賃金

立替払いの対象となる賃金は、給与と退職金です。
未払いの給与と退職金の総額の80%が立替払いされることになります。
もっとも、上限が決まっていて上限額までしか立替払いを受けることができません。
 

年齢 上限
45歳以上 296万円
30歳以上45歳未満 176万円
30歳未満 88万円

 

立替払いを受けるための手続の流れ

1.未払い賃金立替払請求

労働者健康安全機構が用意している書式に必要事項を記載して、請求書を提出します。
 
その際に、「破産管財人発行の証明書」が必要になります。
 
この破産管財人による証明書の発行を受けるためには、賃金台帳等の根拠資料を破産管財人に提供できるように準備しておく必要があります。
 
破産管財人は具体的には、証明証等の以下の証拠書類を提出するように求められています。
 

  • ①破産申立書の写し
  • ②破産手続開始決定書の写し
  • ③会社の登記簿謄本の写し
  • ④退職金の未払いがある場合には、退職金規定及び退職金の計算明細一覧表(管財人の証明印の押印が必要)
  • ⑤賃金台帳の写し(管財人の証明印の押印が必要)
  • ⑥賃金計算期間の途中で退職した場合の未払賃金計算書の写し(管財人の証明印の押印が必要)

 

2.労働者健康安全機構による審査

提出書類の内容に不備がなければ通常30日以内には審査は終了します
 

3.立替払い

労働者が指定した口座に立替払金が送金されます

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