会社が自己破産を選択するメリット
1.黒字転換の見通しが立たない赤字の事業であれば経営者が再スタートするきっかけを作ることができる!!
会社が営んでいる事業が赤字であっても黒字に転換する見通しが立つのであれば、そこは踏みとどまって頑張らなければなりません。
しかし、事業の黒字転換の見通しが立たないのであれば、資金が続く限り(お金が借りられる限りもしくは資産売却で資金を作れる限り)事業を継続することは、経営者(社長)とその家族の経済的な立ち直りを大きく遅らせることがあります。
すなわち、事業が黒字転換する見通しが立たないと感じられた経営者(社長)の方は、それをきっかけに会社を自己破産させ、自らの連帯保証債務の整理も行い、再スタートを切るきっかけにするというのも一つの選択肢としてお考えになられるといいと考えます。
会社を経営していれば、従業員や取引先、家族のことを考えて、また自分が育て上げてきた事業をやめることへの抵抗感から、なかなか自己破産という決断をすることは難しいことだと思います。しかし、事業の黒字転換の見通しが立たない場合、自己破産をするという決断が遅れることが、経営者(社長)とそのご家族の経済的な立ち直りを大きく遅らせることにもなりかねないということを考慮して、自己破産を再スタートのきっかけとされることもお考えください。
2.無理な事業継続で親族等を巻き込まない
中小企業の中でも家族的な経営がされている場合には、金融機関の借り入れに対する社長の連帯保証が原因で、会社の破産と共に社長の債務整理が必要となるだけでなく、会社が倒産した場合には、親族も債務整理を迫られることになることがあります。
具体的には、会社の資金繰りが厳しくなった時点で、社長の個人ローンに親族の連帯保証付きのものを利用したり、親族が個人ローンで借入れたり、住居を担保に提供したり、という状況まで進んでしまうと、後に会社が自己破産した場合には、親族を巻き込んだ形で債務整理をしなければならなくなってしまいます。
3.経営者は自己破産免責を受ければその後に稼いだお金を貯蓄することができる
会社の自己破産と共に、社長も自己破産手続を行い、免責を受けられた場合、免責を受けた後に稼いたお金は、社長の貯蓄とすることができます。
なぜなら、社長の借金は免責を受けた時点でリセットされるからです。
そう考えるのであれば、例えば、倒産寸前の会社が現在行っている事業でなく、新たな事業で立て直しを図るとします。その場合、仮に新たな事業をはじめるのに多くの資金を必要せず、新たな事業で稼ぐことができたとすると、自己破産をせずに新たな事業で借金を返済した場合より、自己破産をしたうえで新たな事業で稼ぐことができた場合の方が経済的には有利となるのです。
4.取引先への迷惑という意味でも正式な破産手続をとることが迷惑の軽減となる
会社が自己破産をすることで、取引先とくに会社に債権を有している者に対しては、迷惑をかけることになります。
もっとも、債権を有する取引先からしてみれば、事実上支払いができない状態になるだけでなく、正式に自己破産してもらえた方がいいということになります。
なぜなら、どうせ回収できない債権であれば、自己破産という形で回収できないことがはっきりしたほうが、税務上、貸倒損失を計上しやすいからです(取引先としては、自己破産する会社に対する債権が財産として計上されたままでは、課税されてしまうので、貸倒損失として計上できる方が税務上いいということです)。
会社が自己破産を選択するデメリット
1.会社が営んできた事業を継続したり、会社財産を保持し続けることはできない
会社は自己破産によって、事業を停止し(黒字の事業があれば破産管財人が事業譲渡をすることはありうる)、換価可能な財産は換価されることになるので、これまで通り事業を継続したり、会社財産を保持し続けることはできません。
2.中小企業の場合社長の連帯保証債務の返済が困難になる
中小企業の場合、とくに金融機関からの借入れやリース会社に対する債務については、ほぼ例外なく社長の連帯保証がついていますので、会社が自己破産をする場合、社長についても多くの場合、債務整理(多くの場合自己破産)をしなければなりません。