社会保険料を滞納している場合
会社が社会保険料を滞納している場合、その会社が自己破産すると、滞納している社会保険料債務はどうなるのでしょうか?
個人の自己破産の場合、社会保険料等の租税債権に準じる債権は、破産免責の対象外であり、個人は自己破産をして免責を受けることができたとしても、その社会保険料債務を負い続けることになります。
一方、会社の自己破産手続が終了すると、その会社(会社は法人ですから)は、法人格を失い、消滅します。
そして、その会社が負っていた社会保険料債務であっても、税金の滞納債務であっても、消滅してしまいます。
法人格が消滅するのに債務だけが存続するということは理論的に説明できませんし、会社は事業をしていないにもかかわらず、租税債務や社会保険料債務が残るといってみても現実的に意味がないのです。
すなわち、会社は自己破産してしまうと、会社が負っていた債務のうち、租税債権か社会保険料の滞納かといったことに関係なく(破産手続において配当を受けることのできる順位については優先される)、全ての債務が消滅し、会社の代表者であっても、原則としてその支払い義務を負わされることはありません。
しかし、会社の代表者が会社の財産を隠すために、倒産直前に会社の財産を個人に移してしまっているような場合には、税務署や市役所から、会社の代表者に対して、課税されることも考えられます。
もっともそのような場合は、破産法上も否認権行使といって、会社の財産に戻さなければならない可能性がありますので、そのような行為に心当たりがあり、ご心配であれば、一度弁護士に相談なさることをお勧めします。
なお、社会保険料の滞納がある場合、弁護士費用や予納金の確保のところで記載したように、社会保険料を滞納して自己破産の準備に入ったところ、支払い停止後に売掛金を回収しようとしたところで、売掛金を差し押さえられるということもありますのでその点の懸念も含めて弁護士に相談されるのがよいと思われます。
もう一つ気になるのが、社会保険料を滞納したまま倒産してしまうことで従業員に不利益が及ばないかということではないでしょうか。
会社が社会保険料を滞納して倒産した場合、会社が社会保険料を支払わないことにより従業員には不利益があるでしょうか?
例えば、会社が従業員の給与から天引きしているにもかかわらず、厚生年金保険料を支払ってないことにより、従業員が厚生年金の受給額を減らされたりするのでしょうか?
この点については、厚生年金保険料を支払う義務があるのは会社であることから、たとえ会社が厚生年金保険料を給与から天引きしているにもかかわらず、納めていなかったからといって従業員の厚生年金の受給額が減らされることはありません。
もっとも、会社が従業員の社会保険料の負担に耐え切れず、社会保険の資格喪失届を出して、従業員を社会保険の対象から外してしまっていた場合には従業員の厚生年金の受給額は減らされてしまいます。