事業停止と従業員の解雇
会社の自己破産を裁判所に申し立てる場合、申立の前もしくはそれと同時に会社がそれまで営んできた事業を停止することがほとんどです。
すなわち、会社はこれまで営んでいた事業を停止し、支払いを停止し、即座に処理しなければならないものだけ処理をして、財産等についてはそれを保全して、自己破産を裁判所に申し立てる必要があります。
そこで、事業停止とともに、その事業に従事していた従業員を解雇することになります。
通常の場合であれば、即日解雇は解雇無効になることが多いですが、破産を前提として事業停止する場合、雇用を継続する余地はありませんから、解雇の有効性について問題となることはほとんどないといえます。
もっとも、完全に事業停止するのではなく、例えば、「仕掛り工事」「在庫処分」「売掛金の回収」のために、一部の従業員の解雇はしないという選択肢も検討しなければなりません。
また、会社としては、従業員に対する最後の誠意もしくは最後の義務の履行として、従業員の解雇を明確に伝達すること、そしてそれに伴う離職手続の履行を速やかにできるように準備する必要があります。
具体的には、「解雇通知書」の準備をし、会社が後日従業員に対して「離職票」を速やかに渡すことができるように、ハローワークに会社が提出する「雇用保険被保険者離職証明書」「雇用保険被保険者資格喪失届」の準備をします。
また、解雇日までの給与の計算、それ以外の未払賃金の有無についての検討、「源泉徴収票」の作成、特別徴収から普通徴収への切り替えに関する「異動届」の各市町村への提出の準備、年金事務所への「被保険者資格喪失届」「適用事業所全喪届」の提出準備、健康保険の切り替え手続きについての従業員への説明等かなり様々な手続きの準備が必要になります。