是正勧告
労働基準監督署からの是正勧告
是正勧告とは、労働基準監督署(以下 労基署)が企業に対し、労働基準法違反箇所を指摘した「是正勧告書」による行政指導を行うことをいいます。
行政指導ですので、それ自体に強制力やペナルティはありません。ただし、勧告に従わない場合には送検されるなど、より厳しい処罰が課せられる場合もあります。
<是正勧告を受けるきっかけ>
きっかけとなるのは、やはり会社や上司に不満を持つ従業員や退職者などからの申告により調査が開始されるケースが多いようです。
そのため、常日頃より社内の人事および労務・人事のトラブルを整備し、適切に行っておくことが大切です。
<是正勧告で指摘される事項>
- ・残業代の未払い(サービス残業)
- ・賃金台帳への労働時間の未記入
- ・就業規則の未作成
- ・法定労働時間、変形労働時間制に関する違反
- ・雇用時の労働条件の書面による明示違反
労働基準監督署から是正勧告を受けた場合
行政指導としては従わない場合のペナルティはありませんが、労働基準法の中で懲役または罰金の罰則規定がありますので、是正せずに放っておくと書類送検となる場合もあります。また、労基署が調査を行った後では対抗する手段はほとんどないと考えた方がよいでしょう。ただし、使用者として主張したい事がある場合にはきちんと主張することは可能です。
近年はコンプライアンス(法令遵守)などが重要視されています。もし是正勧告を受けてしまった場合は、それを人事労務・人事のトラブルを見直すよい機会であるととらえ、社内の改革・改善を図ってみられてはいかがでしょうか。
団体交渉
労働組合から団体交渉の申し入れ
団体交渉とは労働協約の締結その他の事項に関して、労働組合と使用者で行う交渉のことをいいます。これは労働組合法により労働組合に保障された権利ですので、使用者側は正当な理由なくして拒否することはできません。正当な理由なく拒否した場合は不当労働行為となります。
ただし、団体交渉時の人数や出席者、場所、日時などは労働組合の指定通りに行う必要はありません。労働組合はあくまで自分たちに有利な設定で交渉を進めようとしますが、団体交渉のルールについてはお互いの話し合いにより決定されるべきです。
団体交渉での注意事項
<団体交渉への出席者について>
会社側は、必ずしも社長が出席しなければならないわけではありません。権限のある役員や人事課長・総務課長など会社側代表者として交渉できる人であれば構いません。また労働組合に対しては、人数が多すぎると落ち着いた交渉もできなくなるため、合理的な人数に制限することを話し合いましょう。
<団体交渉の場所について>
労働組合側が指定する場所で行う必要はありませんし法的義務もありません。特に会社内の施設や労働組合事務所などは終了時間が延長可能ですので避けた方が賢明です。貸し会議室やホテルなどへの会場変更を通知する事がお勧めです。
<団体交渉の日時について>
場所と同様に日時についても、労働組合側の指定通り行う必要はありません。日にちについては、会社の都合が悪ければ早めに文書で伝え調整しましょう。ただし極端な先延ばしだと団体交渉拒否とみなされる場合がありますので、注意が必要です。また時間については労働時間内の労働組合活動を容認したとみなされないために、所定労働時間外に行う必要があります。
<団体交渉の議題について>
議題が明確でないと交渉の準備ができませんので、議題を明確にするよう労働組合側に求めましょう。
<回答期限について>
労働組合からの要求に対する回答期限が短く設定されていた場合は、回答期限の延長を申し入れます。
<資料の提出について>
労働組合から要求通りの資料全てを提出する必要はありませんが、誠意を持って交渉に臨まなければならないので、妥当な範囲内での資料提出は行う必要があります。