刑事上・民事上の責任

2019/12/30
刑事上・民事上の責任

インターネット上で誹謗中傷を受けたり、プライベートな情報を晒された場合、被害者としてはどのような法的措置を取ることができるのでしょうか。
 
法的措置を検討するにあたっては、そもそもネット上での誹謗中傷やについて法的にどのような責任が発生するのかについて知っておく必要があります。
 
インターネット上で誹謗中傷を行った者は、大きく分けて刑事上の責任と民事上の責任を問われます。
 
刑事上の責任としては、名誉毀損罪(刑法230条1項)や侮辱罪(同法231条)、さらには信用毀損罪・業務妨害罪(同法233条)が成立する可能性があります。
 
一方、民事上の責任としては、被害者に対する損害賠償(慰謝料支払)義務や問題となっている情報の削除義務を負う可能性があります。

ネット上の名誉毀損・プライバシー侵害が成立する要件

まず、皆様にご理解いただきたいのは、インターネット上の情報発信について自分や自社に都合の悪いものであってもその全てが削除請求や損害賠償請求の対象になるわけではないということです。
 
すなわち、一言でいえば、「名誉毀損」もしくは「プライバシー侵害」に該当する情報についてだけ、削除請求や損害賠償請求ができるということになります。
 
つまり、ネット上で中傷被害に遭った場合に、その情報発信者に対して削除請求や損害賠償請求をする場合には、当該情報が名誉毀損もしくはプライバシー侵害に当たるということを被害者の方で積極的に主張・立証し、(裁判にもつれ込んだ場合には)裁判所に名誉毀損・プライバシー侵害に当たると判断してもらう必要があります。
 
そこで、以下では、名誉毀損とプライバシー侵害がどのような場合に成立するかについて簡単に説明します。
 

名誉毀損について

判断枠組み

名誉毀損とは、「公然と事実を摘示し、人の名誉(社会的評価)を低下させること」を言います。
 
まず、「名誉毀損」にいう「名誉」とは、「人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価(社会的評価)」をいいます(最判昭和61年6月11日)。
 
次に、「公然」とは、不特定多数の人に向けてという意味であり、インターネット上の書き込みは、不特定多数の第三者が閲覧可能となりますから、原則として「公然」という要件を充たします。
 
ここにいう「事実」は虚偽のものだけでなく、真実の事実も含まれますので、たとえ本当の事を書いた場合であっても、人の社会的評価を低下させるものであれば名誉毀損が成立する可能性があります。
 
例えば、「◯◯会社の◯◯は、上司と不倫している」とネットに書き込む行為は、不倫していることが真実であっても、不倫は一般的に人の社会的評価を低下させる事実ですから名誉毀損が成立し得ることになります。
 
なお、あるインターネット上の情報や書込みが他人の社会的評価を低下させるものであるかは、基本的に「一般読者の普通の注意と読み方を基準」として判断されます(最判昭和31年7月20日)。
 

例外的に名誉毀損の違法性が否定される場合(真実性の抗弁)

ネット上の情報や書込みが他人の社会的評価を低下させるものであっても、それが①公共の利害に関する事実に係り(公共性)、②もっぱら公益を図る目的に出たものであって(目的の公益性)、③適示された事実がその重要な部分について真実と証明された場合には(真実性)、違法性が否定されて名誉毀損が成立しません(真実性の抗弁)。
 
例えば、犯罪に関する情報や不正を行っている会社に関する情報については、真実性の抗弁によって名誉毀損が成立しない場合があります。
 

プライバシー侵害について

判断枠組み

プライバシー侵害とは、「私生活上の事柄のうち、みだりに他人に公開されたくないと考える事実を公表すること」を言います。
 
具体的には、①私生活上の事実、または事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること、②一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合に公開を欲しないであろうと認められる事柄であること、及び③一般にいまだ知られていない事柄であることの3つの要件を満たす事実(事柄)を公表することを言います。
 
例えば、個人の前科は、一般的に他人に知られたくない個人の秘密ですから、他人の前科情報をネット上に書き込めば原則としてプライバシー侵害となります。また、リベンジポルノのように自分のプライベートの性的な画像や動画が公開された場合もプライバシー侵害に当たります。
 

例外的にプライバシー侵害の違法性が否定される場合

ネット上の情報や書込みが、他人の私生活上における一般に公開されたくないと考える事実(事柄)を公表するものであっても、当該事実の性質及び内容や公表の目的・意義等の種々の要素に照らして、例外的に違法性が否定される場合があります。
 
例えば、他人の前科前歴をインターネット上で公表した場合、原則的にプライバシー侵害に当たりますが、公表された当時の本人の年齢や社会的地位、当該犯罪の内容、公表されることによってプライバシーに属する情報が伝達される範囲と被る具体的被害の程度、記事の目的や意義、公表時の社会的状況、当該情報を公表する必要性などを考慮して、前科前歴を公表することによる公共的な利益が、本人の公表されない法的利益を上回ると判断される場合には、例外的に違法性が否定されることになります(最判平15年3月14日参照)。
 

削除請求や損害賠償請求をする上でのポイント

同定可能性

問題となるインターネット上の情報や書込みが名誉毀損もしくはプライバシー侵害に当たる場合、被害者は当該情報の「削除請求」とそれによって被った損害についての「損害賠償請求」という二つの法的措置をとることが可能です。
 
そして、削除請求や損害賠償請求をするためには当該情報や書込みが自分のことについて記載されていること、つまり、それらインターネット上の情報や書込みによって自分の権利(名誉権・プライバシー権)が侵害されていることが必要となります。
 
自分の権利が侵害されているというためには、当該情報が同姓同名の別人のことではなく自分に関するものであると他人が理解できるものでなければなりません(同定可能性)。
 
なお、同定可能性とは「原告の属性の幾つかを知る者」にとっての同定可能性をいい、一般読者にとっての同定可能性ではありません(東京地裁平成11年6月22日判決《石に泳ぐ魚事件》)。
 
つまり、問題となるネット上の情報見た一般ユーザーにとって同定可能性がなくても、自分(私)の属性の幾つかを知っている者(友人等)が、当該情報を見て、自分(私)と結びつけることが可能であれば、同定可能ということになります。
 

相手方の特定

インターネットによる(特に匿名の投稿等)名誉毀損もしくはプライバシー侵害の場合、削除請求・損害賠償請求をする相手方を特定することがとても重要な課題となってきます。
 
削除請求をする相手方は、①情報を書いた人(情報発信者)、②サイト管理者、③サーバー管理者のいずれかになります。また、損害賠償請求の相手方については、基本的に、①情報を書いた人(情報発信者)となります。

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