削除請求の流れ
ネット上の情報の削除、損害賠償請求という目的を達成する上でポイントとなるのは、やはりより迅速な削除の実現と匿名の相手方をいくつかの手続きを経て特定するというところにあります。
ネット上で名誉毀損やプライバシー侵害にあっている依頼者の皆様としても、まずは迅速に問題となっている情報を削除することが最大の関心事だと思います。
1 誰を相手方とすべきか
削除請求をする相手方は、①情報を書いた人(情報発信者)、②サイト管理者、③サーバー管理者のいずれかになります。
①投稿者については、一般的に投稿日から306ヶ月以内であれば、後述の発信者情報開示請求手続きを利用して特定できる可能性があります。
しかし、投稿者が判明してもその人が素直に削除に応じてくれるとは限りませんから、②サイト管理者や③サーバー管理者を相手方として削除を求めていくのが適切です。
2 サイト内のメールや削除依頼専用フォームを用いた削除請求(任意)
まずは、削除したい情報が書き込まれているWEBサイトの管理者に対して、任意の削除依頼を行います。多くのサイトには、サイトの運営会社に関する記載があり、それを見れば任意の削除請求の相手方(窓口)が判明します。
また、サイトにより対応は様々ですが、サイト内に「削除専用オンライフォーム」や「管理者宛メールフォーム」、「お問い合わせフォーム」が用意されている場合もあり、その場合、そこから削除依頼ができます。
そのような削除依頼フォームが用意されていなくても、サイト管理者が任意削除に応じる旨表明している場合には、比較的にスムーズに削除が行われる可能性が高いです。
反対に、上記のような削除依頼フォームがサイト内に用意されておらず、サイト管理者が裁判所の判断がない限り、削除しないとサイト内等で表明している場合には、任意での削除に応じてくれる可能性は低いです。
3 テレコムサービス協会の書式による削除依頼(送信防止措置依頼)
同じく、任意の削除請求の方法として、テレコムサービ協会のプロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会が定めた「送信防止措置依頼書」の書式を利用して削除依頼することもできます。
この方法を利用する場合には、サイト管理者やサーバー管理者に対し、現在事項証明書(法人)・本人確認書類(個人)や印鑑証明書を「送信防止措置依頼書」と一緒に郵送する必要があります。
サイト管理者やサーバー管理者がこの書類を受け取ると、情報発信者に対して、情報の削除の可否について照会し、7日以内に反論がなければ当該情報が削除されます。
もっとも、サイト管理者やサーバー管理者はこの照会を行う義務があるわけではありませんし、表現の自由に配慮してか削除に応じないこともあります。
4 裁判所へ仮処分命令の申立を行う(法的措置)
WEBサイトの管理者が削除要請に応じない、または裁判所の判断によると表明している場合、裁判所へ仮処分命令の申立を行います。
仮処分の手続きは、通常の民事裁判よりも時間が掛からないため、インターネットの誹謗中傷やプライバシーの侵害など一刻も早く削除したいケースでは有効です。
申立から仮処分命令が下されるまでの期間は、通常1~2ヶ月程度となります。
仮処分といっても、サイト管理者が裁判所の命令により削除に応じた場合、削除請求手続きはこれで完了します。
ほとんどのケースでサイト管理者は仮処分命令に従いますが、万が一応じない場合は強制執行手続きを行います。
仮処分を利用するには、担保金を納付する必要がありますが(30050万)、削除請求仮処分においては、多くの場合、一旦納付する必要があるだけで、短期間で取り戻すことが可能です。
仮処分命令の申立に必要な証拠
- 削除対象であるネット上の情報のスクリーンショットまたは印刷物
- 当該情報の違法性を疎明する陳述書等の書面
- whoisの検索結果等のサイト管理人が誰であるかを示す書面等
申立書をどこの裁判所に提出するか
削除請求仮処分の相手方となるサイト管理者やサーバー管理者の普通裁判籍(自然人の場合は住所、法人の場合は主たる事務所)の他に、不法行為地の特別裁判籍(不法行為が行われた場所のみならず損害発生地も含む)が削除請求仮処分の管轄と認められます。
ネット上の名誉毀損・プライバシー侵害(不法行為)については、パソコン等で問題となるネット上の情報を見た場所が損害発生地とされていることから、通常は、被害者である仮処分申立人の住所を管轄する裁判所に対して、削除請求仮処分を申し立てる(特別裁判籍)ことになります。
5 強制執行手続き(法的措置)
サイト管理者が仮処分に従わず書き込みを放置した場合は、仮処分命令に基づく強制執行手続きを行います。
強制執行の申立を行った場合、サイト管理者が削除に応じるまで、裁判所が命じた金額を相手方に支払わせることができます。(民事保全法52条1項、民事執行法172条)
6 民事訴訟(法的措置)
インターネットで誹謗中傷やプライバシー侵害の書き込みに対する削除請求では、上記の様に仮処分の申立で解決することが一般的ですので、削除に対して通常訴訟を行うことはほとんどありません。
民事訴訟は損害賠償請求について行うことになります。