営業秘密保護・知的財産 意匠権とは

2021/01/26
営業秘密保護・知的財産 意匠権とは

意匠権とは

消費者が商品を選ぶ際の重要な要素のひとつに、商品の外観、デザインがあります。

そのため、製造業者は商品のデザインに工夫を凝らし、消費者の心をつかもうとしています。

しかし、当然のことですが、デザインは外から見えるため、模倣することが難しくありません。

せっかく優れたデザイン、使い勝手のよいデザインを考案して商品化しても、同業他社が自由に模倣できるようでは、創作に対する意欲が低下してしまいます。

そこで、このような外観についてのアイデアを権利として保護する必要があると考えられています。

それが意匠権です。

今回は、意匠権の概要を解説します。

意匠とは

意匠とは、一般にデザインのことをいいます。

意匠法では、次のように定められています。第2条1項この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。第8条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。

視覚によって認識できることが要件ですので、製品の内部構造のように通常は目で見ることができないものは意匠とはいえません。

意匠法の目的

意匠法は、その目的について次のように規定しています。第1条この法律は、意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする。

意匠が権利として保護されることになれば、意匠の創作の意欲が向上します。

創作の意欲が向上すれば、優れた意匠が創作される可能性が高くなるでしょう。

その結果、優れた意匠が創作されれば、商品に対する需要が拡大されます。

商品に対する需要が拡大することは、産業の興隆につながります。

意匠法は、このような一連の流れを実現することを目的としているのです。

他の知的財産権との違い

アイデアを保護するものは、意匠法に限られません。

人間の知的創造活動の成果を保護するものを知的財産権と呼び、意匠権もそのひとつとされています。知的財産基本法 第2条この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。2 この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。

それでは、意匠権は、他の知的財産権とどのような違いがあるのでしょうか。

⑴ 特許権との違い

まず特許法の規定を確認しましょう。特許法 第1条この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。第2条この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。2 この法律で「特許発明」とは、特許を受けている発明をいう。

1.で紹介した意匠法の規定と比較すると、

①いずれも保護の対象は創作であり、

②創作の保護及び利用を図ることで創作を奨励し、産業の発達に寄与することを目的としている

という共通点があります。

両者の違いは、創作(アイデア)の対象にあります。

これまで解説したとおり、意匠は外観(デザイン)についてのアイデアを保護するものです。

これに対し、特許は自然法則を利用した物の構造、機能などについてのアイデアを保護するものです。技術的なアイデアであり、外観は問われません。

このように両者の保護の対象は異なり、権利が認められる要件も異なります。

したがって、一方が認められれば他方は認められないというような関係にはなく、ひとつの製品で特許権も意匠権も取得することができる場合もあります。

⑵ 著作権との違い

また、創作を保護するものとしてよく知られているものに、著作権があります。

著作権についての規定を確認しましょう。著作権法 第1条この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。第2条この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう

意匠権も著作権も創作を保護するものです。

著作権は、文章や音楽だけでなく、絵画やイラストなども対象になりますから、外観を保護する意匠権とどのように区別するかが問題になります。

著作権法と意匠法の条文を比較すると、前者が文化の発展に寄与することを目的とするのに対して、後者が産業の発達に寄与することを姥久手としているという違いがあることがわかります。

イメージとしては、著作権法は一点ものの芸術作品を対象とするものであるのに対し、意匠法は工場で大量生産される製品のデザインを対象とするものととらえることができるでしょう。

また、著作権は創作と著作物の創作と同時に発生するのに対し、意匠権を取得するには意匠法で定められた手続が必要になるという違いもあります。

意匠権取得の流れ

意匠権は、創作をしただけで取得できるものではありません。

意匠権を取得するまでの流れを確認しましょう。

⑴ 登録出願

意匠登録を受けようとする者は、法に定められた事項を記載した願書に図面を添付して特許庁長官に提出します(意匠法6条1項)。

⑵ 審査

特許庁長官は、審査官に意匠登録出願を審査させます(同16条)。

審査には、方式審査と実体審査があります。

方式審査は、提出された願書などについて、必要書類がそろっているか、記載もれはないかといった形式的な不備の有無を審査するものです。

形式面に不備があった場合には、特許庁から補正指令がなされます。

これに対して、実体審査は、出願された意匠の内容が意匠法の要件を満たすかを審査するものです。

⑶ 登録査定

審査官は、意匠登録出願について拒絶の理由を発見しないときは、意匠登録をすべき旨の査定をします(同18条。)

拒絶の理由があるとき(要件を満たさないとき)は、拒絶理由通知書が送付されます。

拒絶理由通知書を受け取った出願人は、補正書や意見書を提出することができます。

その結果、拒絶理由が解消したと判断したときは、審査官は登録査定をします。

⑷ 登録料納付

意匠権の登録を受けるには、定められた期限までに第1年分の登録料を納付しなければなりません(同42条1項、43条)。

⑸ 設定登録

定められた登録料が納付されたときは、意匠権の設定の登録がなされます(同20条2項)。

意匠権は、設定の登録によって発生します(20条1項)。

また、意匠権の登録があったときは、意匠権者の氏名・住所、意匠登録出願の番号・年月日、登録番号・設定の登録の年月日、願書・願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本の内容などを公報に掲載することになっています(20条3項)。

意匠公報によって、意匠権の設定の登録があったことが一般に公開されるのです。

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