時効援用 – 督促状等が届いた場合の対応
時効による利益を享受したい人はどうすればよいか
まずは、債権者に対して、内容証明郵便にて時効援用通知書を送ります。
以下は、5年の消滅時効が完成する場合の「時効援用通知書」の簡単な書式です。
以下の借金につきましては、最終返済日である平成〇〇年〇月〇日からすでに5年が経過しており、時効消滅しております。つきましては、本書をもって、当該借金の時効を援用いたします。
借入人氏名:〇〇〇〇(ふりがな)
住所:福岡県〇〇市〇〇
生年月日:昭和〇〇年〇月〇日
当初借入日:平成〇〇年〇月〇日
当初借り入れ額:〇〇円」
基本的に、上記で十分なのですが、時効が完成すると、個人信用情報の事故情報を消してもらうことも可能になるため、信用情報期間に通知をして、事故情報を抹消するよう求める内容を記載しておいても良いです。
その場合の記載は、例えば、以下のようになります。
「つきましては、本書面受取後、速やかに信用情報機関に通知を行い、登録されている事故情報を抹消する手続きをなさいますよう、合わせてお願いいたします。」
と付加記載するとようでしょう。
ただ実際、自己の当該事件において、その事案に応じたミスのない時効援用通知書を作成するとなると、なかなか難しいものです。
債権者からの督促等に対し、債務者が法的な面を知らないまま対応すると、消滅時効による債務の消滅を主張できなくなるという重大な事態にもなりかねません。
また、時効が完成していないのに間違って通知をしてしまうと、大きなリスクがあります。
消滅時効が完成しているのか判然としないときには債権の調査等の証拠関係の精査等が必要となります。
このような場合には、弁護士への依頼があれば、弁護士が債権の内容を調査し、依頼者と面談し、その内容を確認して、時効の完成の有無を確認して時効援用通知書(内容証明郵便)の作成をして援用の手続を採ります。
もしご自身で作成した時効援用通知書の記載内容に自信がない場合には、弁護士に相談して内容を確認してもらうことをお勧めいたします。
消滅時効の援用ができない場合には多額な債務が残り、その債務の整理が必要となる場合もあります。
弁護士に依頼されれば、後述しますように時効援用にかかわる紛争の一切を解決する上で必要な一切の業務を代理できます。
債権者からの督促等に対し、債務者が法律的なアドバイスを受けないまま対応する危険性について
例えば債務者の方で、債権者からの強い督促等に対して、消滅時効の完成を知らないで一部弁済したりすると、どうなるのでしょうか。
時効が完成した後に返済をすると、時効援用権を喪失します。
時効期間経過後で、仮に消滅時効が完成していることを知らなくても、一部弁済をすると信義則上債務者は時効の援用権を行使できなくなります (最高裁昭和41年4月20日判決)。
例えば、時効期間経過後に業者からハガキがきて、請求されるままに1,000円だけ支払ったというような場合、支払った時点で時効援用権を失ってしまい、その1,000円の返済から5年間は、時効の援用ができなくなる可能性があります。
この場合、仮に数千万、数百万、数十万、数万等の借金だとしても消滅時効による債務の消滅を主張できなくなります。
その場合、一部弁済時に自己の債務が消滅時効にかかっていることを仮に知らなくても同様です。
債権額が大きい場合の債務者の不利益は押して知るべきで、多大な不利益を被ることにもなりかねません。
間違って時効援用通知をしてしまう際のリスク
- (1)債権者から督促が来るリスク時効援用通知を送るときには、自分の連絡先を書いて送ることになります。
そうすると、時効援用により債権者に今の自分の連絡先を知られてしまいます。
弁護士へ依頼すると、事前に時効完成の有無を調べることができますし、債務者の現住所を相手に知らせることもないので、債権者から督促を受けずに済みます。 - (2)債務承認になってしまうリスク時効援用通知を送るとき、内容に慎重にならないと、「債務承認」になってしまうおそれがあります。
時効援用通知には、自分に借金があることを認める性質があるので、まずい書き方をすると、債務承認とみなされるのです。その場合、自分にその気がなくても、債権者がそう主張してくる可能性は高いです。時効完成前に自己判断で不用意な時効援用通知を送ると、債務承認になる上に、債権者に住所まで知られて、これまで借金の返済の督促を逃れてきたのにそれができなくなってしまうおそれがあります。そうならないためにも確実に時効消滅していることについて調査方法や時効援用通知の内容等を熟知し、正確な援用通知書を作成出来る専門家に依頼された方が無難です。
債権回収業者や消費者金融から裁判を起こされた場合の対応
ご自身で慌てて債権者に連絡をとったり、答弁者を提出すると、場合によっては先述の通り時効が中断したり、消滅時効の援用権が主張できなくなることがあります。
また反対に、裁判所から「貸金返還請求事件」「譲受債権請求事件」、「○○簡易裁判所 答弁書の督促状」とかがきているのに何もしないでそのまま放置していると、欠席裁判となります。
その場合、債権者の主張通りの裁判が下されてしまいますので、消滅時効期間は10年に延びてしまします。
上記のような書面を受領された方は自分で対処しようとせず、まずはすぐに弁護士にご相談ください。