時効援用 – 信用情報機関の事故情報の抹消
信用情報機関の事故情報について
貸金業者やカード会社等は個人信用情報機関に登録しており、債務者の返済状況を個人信用情報機関に提供しています。
約束どおりに返済している限りは信用情報に傷が付くことはありませんが、債務者が借金の返済を延滞した場合、信用情報に「延滞」と登録され、いわゆるブラックリストに載った状態となります。
一度、延滞情報が載ってしまうと、基本的にはずっと延滞情報が掲載されるので、借金を返済しない間は信用情報がブラックになったままとなります。
延滞情報が掲載されていると、原則的に他社を含めて新たに融資を受けられなくなったり、クレジットカードの利用ができなくなります。
長期延滞者は、時効の援用をした方が良いとされています。
借主が消滅時効を援用した場合、信用情報機関の事故情報は抹消されるか
借主である債務者が消滅時効を援用した場合、法的な支払義務はなくなります。
そのため、信用情報機関に掲載されている事故情報も当然消してもらえるかと思いがちですが、必ずしもそうではありません。
この辺の対応は貸金業者によっても異なりますが、中には消滅時効の援用は認めても信用情報については何もしてくれない業者もいます。
こういった対応をする根拠の一つに、消滅時効の援用をした場合、法的な支払義務は免れるが借金自体は残るという考え方(これを「自然債務」といいます)があるからです。
これに対して、消滅時効を援用した場合、借金自体がすべてなくなるという考え方もあり、現時点では借金が自然債務として残るのか、完全に消滅するかについての見解は分かれています。
そのため、貸金業者の中には自然債務である以上、たとえ消滅時効の援用によって、法的な支払義務がなくなっても借金自体は存在し続け、延滞されている状況に変わりはないので、信用情報には何もせず、手を付けないという対応を取るところがあるわけです。
なお、自己破産をした場合は、免責決定の確定により法的な支払義務はなくなりますが、借金自体は自然債務として残り続けます。
とはいえ、自己破産した場合の事故情報も一生載るわけではなく、信用情報機関によって違いはありますが、5~10年の一定期間経過後に削除されます。
日本信用情報機構(JICC)の対応(貸金業者関係)
基本的に信用情報機関は会員企業が上げてきた情報を元に信用情報を掲載します。
そのため、消滅時効の援用を受けた貸金業者が「完済」で情報を上げた場合は、たとえ実体が消滅時効の援用であっても完済として情報を掲載するようです。
したがって、債務はないことにありますが、いわゆる事故情報は残ることになります。
会員企業が実態どおり消滅時効の援用による消滅との情報を上げた場合は、ファイルごと削除されて該当情報なしになります。
これはどういうことかといえば、信用情報自体がなくなるので、消滅時効の援用によっていわゆるブラックリストと呼ばれる事故情報がなくなることを意味します。
よって、社内ブラックに登録されていない貸金業者からは、借りれるようになります。
なお、時効の援用により消滅と掲載されることはないとのことです。
シー・アイ・シー(CIC)の対応(カード会社関係)
時効の援用による消滅の場合、シー・アイ・シー(CIC)では会員企業が貸し倒れとの情報を上げれば「貸し倒れ」と記載され、契約終了との情報を上げれば「契約終了」と記載されるようです。
もし、債務者が貸し倒れではなく、契約終了の記載を要求しても、シー・アイ・シー(CIC)が訂正に応じることはないとのことです。
なお、「貸し倒れ」と「契約終了」の掲載期間はいずれも5年間です。
したがって、消滅時効の援用をすれば5年後にはいわゆるブラックリストと呼ばれる事故情報が消えることになります。