こんな時はぜひご相談ください。親が認知症の症状が出始めている様子で、悪徳商法などに引っかからないか心配だ。親の介護・医療費等を本人の銀行口座から出金して支払いたいが、親が認知症で意味を理解していないため、定期預金を解約して引き出すことができない。また、普通預金の引き出し額についても、他の親族とトラブルが起きないか不安だ。共有になっている不動産について、購入希望の話があるので、売却について協議をしたいが、共有者の一人が、認知症になってしまっている。今はまだ元気だが、自分の判断力が将来低下した時のことを考え、今のうちに手を打ちたい。知的障害を持つ子どもがおり、財産管理を安心して任せられる者が見当たらず、親が亡くなった後のことが心配だ。相続問題を解決したいが、相続人の一人が認知症になってしまっており、遺産分割協議が進められない。
成年後見制度とは?
成年後見制度というのは、認知症、精神障害、知的障害などにより、うまく物事を判断できなくなった人の保護をしたり、支援する必要があるときに利用する制度です。
こうした方々は、自分の財産を適正に管理することや、日常生活に必要な契約や、遺産分割協議などを、十分に理解して行うことができません。
そのため、詐欺などの被害にあって財産を失ってしまったり、施設への入所に必要な契約を行うことができなかったりと、日常生活に支障が生じてしまうことがあります。
そこで、判断能力が低下した本人の判断を補い、支援するため、本人に代わって必要な契約や手続きを行うことができる者として成年後見人が選任されるのです。
財産管理 | 印鑑、預貯金通帳の管理・収入・支出の管理(預貯金の管理、年金・給料の受取、公共料金・税金の支払いなど)不動産の管理、処分などの後行為貸地・貸家の管理遺産相続の手続き 等 |
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療養看護 | 入院などの契約、費用の支払いなどの行為施設の入退所などの契約等の各種手続き、費用の支払いなどの行為医療機関に関しての各種手続き、費用の支払い |
成年後見制度の種類
成年後見制度には、大きく分けて2つの制度があります。
法定後見制度
法定後見制度は、本人の判断力の低下の程度が大きいものから順に「成年後見」「保佐」「補助」の3段階に分かれています。
法定後見制度においては、4親等内の親族等の法律で定められている一定の申立権者による家庭裁判所に対する申立(後見開始の審判申立、保佐開始の審判申立、補助開始の審判申立)により、家庭裁判所が選任した者(成年後見人、保佐人、補助人)が、本人(成年被後見人、被保佐人、被補助人)の利益の擁護のために、本人を代理し契約などの法律行為をしたり、本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって、本人を保護・支援する制度です。
後見 | 保佐 | 補助 | |
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対象者 | 判断能力が欠けていることが通常の状態の方 | 判断能力が著しく不十分な方 | 判断能力が不十分な方 |
制度利用の申立をすることができる人 | 本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長など | ||
成年後見人・保佐人・補助人の同意が必要な行為 | 借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、新築・増改築などの行為等(民法13条1項所定の行為) | 申立ての範囲内で家庭裁判所により審判で定める特定の法律行為(左枠内の民法13条1項所定の行為の一部) | |
取消しが可能な行為 | 日常生活に関する行為以外の行為すべて | 同上、日常生活に関する行為 | 同上、日常生活に関する行為 |
後見人・保佐人・補助人に与えられる代理権の範囲 | 財産に関する法律行為すべて | 申立ての範囲内において家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」 | 申立ての範囲内において家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」 |
任意後見制度
任意後見制度は、本人が、認知症、精神障害、知的障害などにより判断力が低下する前に、本人が将来自己の判断能力が不十分になったときには、自らの生活や財産管理、療養看護について、代理権を与える人(任意後見人といいます)とその人の事務内容を契約(任意後見契約。公証人の作成する公正証書による契約)によって決めておく制度です。
このような任意後見契約を任意後見人と締結しておくことで、本人の判断力が低下する事態が生じた場合には、任意後見人が家庭裁判所に、任意後見監督人の選任の手続を行い、家庭裁判所が選任した任意後見監督人の監督のもとで、任意後見人が本人を代理して必要な契約を締結する等して、本人の従前の意思に基づいた適切な財産管理や療養看護を行っていくことになります。
法定後見 | 任意後見 | |
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後見人の選任権 | 家庭裁判所申立人による候補者指定は可能 | 本人 |
後見人を選任する時期 | 本人の判断能力が不十分となってしまってから | 本人の判断能力が十分である時期 |
後見人の果たす役割 (職務内容) | 法律で決められた種類に応じて、決められた内容が存在する | 任意後見契約によるため自由に決めることができる |