個人再生手続きを検討する場合に考えるべきこと
- (1)債権額の把握まずは、債権者と債権額を把握することが検討の第一歩となります。この際に、個人の知人からした借金についても除外して考えてはいけません。もっとも、従前利息制限法上の上限利率を超えて利息を支払っていた貸金業者に対する債務については再計算の結果、債権額が減少したり、過払い金が発生していることもあります。
- (2)清算価値の把握清算価値とは、簡単にいうと、自己破産した場合に換価されるべき財産を換価した価値ということになります。
具体的にいうと、預貯金や車、生命保険金の解約返戻金、過払金返還請求権、不動産など全ての財産の価値を合計したもの(厳密には、全ての財産ではなく、預貯金については20万円、生命保険金については解約返戻金が20万円以上について清算価値に算入されることになります。)です。 - (3)再生計画案が認可された場合に確保すべき弁済原資の計算(返さなければならない金額の計算)そして、再生計画案が認可された場合に返さなければならない金額は、
債権額の5分の1※ 清算価値 → いずれか金額の大きい方
※ 厳密には必ずしも債権額の5分の1ではなく、債権額に応じて債権カットの割合は異なります。詳細は、債権の減額表参照 - (4)返さなければならない金額を返すことのできる収入の裏付け返さなければならない金額が把握できたら、その金額を捻出できる収入の裏付け、すなわち会社員であれば給与、個人事業者であれば売上が安定していることが必要となります。当然のことながら、その収入で生活をしている者の生活費を差し引いても、返済原資を安定的に確保できることが必要となります。
- (5)借金の原因の分析とその解決方法個人再生を申立てることで、債権カットを受けないと、返済することができないほどの額の借金を抱えることとなった原因を分析し、その借金ができた原因が解消され今後同じようなことが起こる可能性が低いといえることが必要となります。
個人再生手続きを検討する具体例
Cさんは、消費者金融4社から合計250万円、銀行2社から合計400万円の借り入れがあり、借入総額は650万円になっていました。
Cさんには、財産として、預貯金30万円、時価100万円の車、生命保険の解約返戻金30万円の生命保険契約、過払金60万円、事業用の動産50万円分がありました。
とすると、再生計画が認可された場合に、その後に返済しなければならない金額は、まず債権額に応じて算定される金額が650万円の5分の1で130万円となります。
一方、清算価値は、【預貯金については20万円】【車については20万円】【生命保険解約返戻金については20万円】については清算価値に算入しない取扱いとなり、清算価値=【預貯金 10万円】+【車 80万円】+【生命保険解約返戻金 10万円】+【過払金 60万円】+【事業用の動産 50万円】=210万円となります。
したがって、結論として210万円の返済が必要ということになります。
すなわち、3年間での返済計画とすると月額5万8333円、5年間の返済計画とすると月額3万5000円の返済が必要ということになります。
Cさんは、個人事業で建設業を営んでおり、過去の実績からすれば、事業で得られた収益から生活費を差し引いて、月額5万円の返済原資を確保することは十分可能でした。
また、Cさんが総額650万円もの借金を負った理由には、事業資金の借り入れが必要であったという理由もありましたが、パチンコへの費消や衣類などの購入への浪費もあったことから、それらを今後繰り返さないことで、月額5万円の返済原資を確保して、5年間の再生計画を実行することは十分に可能となります。
という流れで検討することで、個人再生手続きを選択した場合、再生計画の認可を受ける目途を建てることができます。