「住宅」とは
「住宅」に該当するための要件の一つに、「個人である再生債務者が自己の居住の用に供する建物であること」という定めがあります。
ですので、工場用建物や店舗のように、住まいとしてではなく事業のためにだけ使用する建物や、賃貸アパートのように他人が居住するための建物は、再生債務者の生活の本拠には当たらないことになり、「住宅」としては認めらないことになります。
ただし、建物を「自己の居住の用に供する」ことで足り、現に「供している」ことまでは要件とはされていないので、例えば、転勤等で家族だけが自宅に残って再生債務者は単身赴任で別居していたり、定期借家契約など転勤の間だけ一時的に他人に賃貸するといった一時的な事情によって現に居住していない建物であっても、再生債務者の生活の本拠として「住居」と認められるのです。
この点、別紙「新注釈民事再生法(下)」234頁においても、「自己の居住の用に供する建物」の定義として、『建物を自己の居住の用に「供する」ことで足り、現に「供している」ことまでを要件とはしていない。転勤等の事由により、自宅に家族を残して再生債務者が単身赴任して他に居住していたり、転勤の間だけ一時的に他人に賃貸していたりという一時的な事情によりたまたま自己の居住の用に供していないからといって、住宅資金特別条項の利用ができないのでは、再生債務者が生活の本拠地を失ってしまい相当ではない』と記されています。
以上のことからも、転勤等で単身赴任によって住宅ローン対象物件に居住していなくても、そこに家族だけが残って住んでいたり、いずれ戻る予定で一時的に他人に賃貸しているような場合は、一時的な事情にすぎず、本来の目的はあくまで自己の居住に供するものであるので、本来の目的はあくまで自己の居住に供するものであるので、このような場合、民事再生法第196条1号に定める「住宅」に該当するということになります。
住宅ローン特則を利用するために必要な条件
個人再生手続において、住宅ローン支払い中の自宅を処分しないで(自宅を守りながら)手続きを進めるためには、以下のような要件を満たすことが必要となります。
- (1)自己所有(共有)の居住用の住宅であること
- (2)特別条項により弁済を継続する債権が、住宅資金貸付債権であること
- (3)住宅又は住宅と共同担保に入っている他の不動産に後順位の抵当権等が設定されていないこと
- (4)住宅ローンの保証会社が代位弁済している場合には、代位弁済がなされた日から6か月経過するまでの間に再生手続申立てがなされること
住宅ローン特別条項を用いて小規模個人再生を利用した例
Bさんの場合(個人事業主)
弁護士受任時は、福岡市在住の46歳。再生申立前から個人事業主(月の利益30万円程度)を営んでおり、再生申立後も個人事業を継続したいとの意向でした。また、住宅ローンの返済を継続したいとの意向で、住宅ローン特別条項を利用しました。申立前は、住宅ローンを除いて月額25万円程の返済に追われていましたが、計画弁済においては月額約5万円に返済額を抑えることができました。
個人再生申立前
負債総額 約1700万円
住宅ローン残高 150万円
個人再生申立後
計画弁済額 300万円
→5年間の計画で300万円を弁済
住宅ローン月12万円の支払継続