遺産の内容がわからない場合
例えば、被相続人には子が複数いて、相続人である兄弟のうち1人が親と同居している状況で、他の兄弟は親と別に暮らしているというケースでは、被相続人の財産すなわち遺産として何があるのかということについて、同居していない子は、正確に把握していないことが多いですし、全くわからないということもあります。
そのような場合、遺産分割協議をする前提として、相続財産の内訳を一番よく把握しているであろう相続人が、遺産の内容を明らかにすることで協議をスムーズに進めることができます。
しかし、相続財産の内訳を一番よく把握しているであろう相続人が、他の相続人に対して遺産の内容を明らかにしなかったり、事実異なる内容を告げたりすることがあります。
そのようなことをする動機として、「預金通帳等見られてしまうと被相続人から生前に多額の贈与を受けていることがばれてしまうかもしれないから」とか、「本来遺産として残っているであろうと想定される預貯金額よりも明らかに少ない預貯金しか残っておらず、被相続人の生前に無断で預貯金を引き出していることが発覚してしまうかもしれないから」、「何も主張が出なければ遺産分割協議書を作成せずにうやむやのままにしておきたいから」等のことが考えられます。
このような場合、相続財産を把握していない相続人としては、一番よく把握しているであろう相続人から遺産の内容について十分な開示が得られなければ、金融機関に対して取引履歴の開示を求めたり、名寄帳を取得したり、相続税の申告が必要な事案であれば相続税申告書を確認したりすることで遺産分割協議の前提となる相続財産の把握を進めていくこととなります。