遺産相続 相続人の範囲・確定

2021/06/09
遺産相続 相続人の範囲・確定

相続人の範囲・確定

相続欠格

相続欠格とは、民法891条に定められている一定の事由(その一定の事由のことを相続欠格事由といいます)に該当した場合、法定相続人であっても、相続人となることができなくなってしまうという制度です。

欠格事由は、以下の通り民法に定められております。① 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者殺人罪や殺人未遂罪,遺棄罪等によって財産を持っている被相続人、または自分と相続に関して同等以上の立場にある者を死亡させたり、死亡させようとした者が該当します。② 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。被相続人が殺害されたことを知りながら告発・告訴しなかった者も相続欠格に当たります。ただし、幼年者や、殺害者が配偶者や直系血族の場合は除かれます(但書)③ 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者被相続人が遺言書を作成・撤回・取消し・変更しようとしているのを知りつつ、詐欺や強迫によってそれらの行為を妨害した相続人が該当します。
もっとも、妨害行為が不当な利益を目的としてなされたものでない場合には5号同様、相続欠格となりません。④ 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者実際に被相続人に対して、詐欺・強迫を用いて遺言書を作成・撤回・取消し・変更させた者も相続欠格になります。
もっとも、当該行為によって不当に利益を得る目的がない場合には、相続欠格となりません。⑤ 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者遺言書を発見して、その内容が自分にとって不利になると考えて遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿すれば相続欠格となります。

このうち、特に実務的に問題となるのが、3号、4号、5号に定められている遺言への不正な関与についてです。

判例でも例えば、5号の遺言書の「隠匿」について、最高裁(平成9年1月28日決定)は、「相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合において、相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は、民法八九一条五号所定の相続欠格者には当たらないものと解するのが相当である。」と判示しています。

すなわち、遺言書を相続人のうちの一人が隠したり、捨てたりした場合に、当然にその者が相続人となることができなくなるわけではなく、「相続に関して不当な利益を目的とするものである」(具体的には、財産的に自分に不利な内容の遺言であるから隠匿するような場合である)ことが必要ということです。

例えば、相続人が遺言書を発見したにもかかわらず、長年自ら保管して遺言書検認の手続きを求めなかったら、客観的には遺言書の「隠匿」に当たります。

しかし、遺言書の内容が被相続人の遺産の全部または大部分を当該相続人に相続させるというものであった場合には、「隠匿」しても当該相続人には利益となりません

この場合、不当な利益を目的とするものではなく、891条5号の相続欠格者には該当しません。

「相続欠格事由」がある場合の効果

相続欠格事由がある場合には、相続人の廃除とは異なり、家庭裁判所の審判は必要なく、相続欠格事由があれば法律上当然に相続権がなくなるという効果が生じます。

とはいっても、相続欠格事由があるかどうかについて争いがある場合にはどのようにしてそれを確定するのでしょうか?

これについては、「相続権不存在確認請求訴訟」という裁判において確定することとなります。

この裁判において、上記の欠格事由が存在するのかどうかということが証拠に基づいて認定されることになります。

なお、特定の相続人に相続欠格事由があったしたとしても、その相続人に子がいればその子に代襲相続は発生するので注意が必要です。

相続人の廃除

相続人の廃除とは、相続欠格とは異なり、被相続人が生前にその意思で相続人の相続権をはく奪する制度です。民法892条に以下のように定められています。

第892条(推定相続人の廃除)
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる
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実務的には、「暴行」「暴言」「金銭の貸し借り」「金銭の横領」「介護をしない」等が問題となります。

具体的な言動が廃除事由にあたるかどうかは、一時的なものであるのか、反復・継続的なものであるのか、その程度等を考慮して決められることになります。

民法892条の「著しい非行」に該当するものとして,推定相続人の廃除が認められた事例は以下の様なものがあります。

福島家裁平成19年10月31日審判
被相続人(母)の遺言執行者が,遺言による相手方(長男)の推定相続人からの廃除を申し立てた事案において、被相続人が70歳を超えた高齢であり、介護が必要な状態であったにもかかわらず、被相続人の介護を妻に任せたまま出奔した上、父から相続した田畑を被相続人や親族らに知らせないまま売却し、妻との離婚後、被相続人や子らに自らの所在を明らかにせず、扶養料も全く支払わなかったものであるから、これら相手方のこれらの行為は、悪意の遺棄に該当するとともに、相続的共同関係を破壊するに足りる「著しい非行」に該当する。

なお、家庭裁判所の審判によって相続人を廃除したとしても、その相続人の子に代襲相続は発生するので注意が必要です。

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