2021/06/09
遺産相続 遺留分の放棄
遺留分の放棄
相続開始後の遺留分の放棄は、既に遺留分権利者に帰属した権利を放棄するだけなので、その者の自由意思に基づいて自由にできると解釈されています。
すなわち、遺留分減殺請求権は、あくまで遺留分を有する者の権利であり、請求しないということも許されるのです。
一方、相続開始前の遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を得たときに限り認められています(民法1043条1項)。
遺留分の相続開始前の放棄の効果としては、他の遺留分権利者の遺留分が増加するのではなく、被相続人が遺言等で自由に決めることができる財産の割合が増加することになります(民法1043条2項)。
- 長男がAの生前、家庭裁判所の許可を得て相続放棄をすると、妻Bや次男Dの遺留分が増えるのではなく、遺留分はB4分の1、D8分の1のまま。
また、家庭裁判所の許可を得て、Cが遺留分をAの生前に放棄したとしても、相続放棄をしたわけではないから、Cは相続人としての地位を失うわけではないことに注意が必要です。
(もっとも、CがAの生前に遺留分放棄をしたとしてもなお相続人であることは、遺留分の生前放棄を行う場合、多くの場合において、Aは遺言によってその相続財産の処分を決めていることから、問題とならないこともあります)
なお、被相続人の生前に家庭裁判所の許可を得て遺留分放棄をする場合、家庭裁判所の許可の審判は、放棄をする者の意思を確認するだけでなく、遺留分の放棄が合理的かつ妥当であるかを一切の事情を考慮して判断するとされています。