遺産から生じた収益の分配について
遺産から生じた収益の分配について、どのような手続きにおいて解決するのか、ということが遺産分割をするにあたっては問題となることがあります。(いいかえれば、遺産から生じた収益をこれも「遺産」として理解して、当事者の話し合いがつかなければ、家庭裁判所における遺産分割調停・審判の手続きにおいて解決すればいいのか、遺産ではないとして、家庭裁判所における遺産分割調停・審判の手続きにおいて解決することはできないと理解すべきなのか、ということが問題となることがあります)。
具体的には、「遺産の中に不動産があり、その不動産が賃料収入という収益を生む場合」や、「遺産の中に株式があり、その株式が配当金という収益を生む場合」、「遺産の中に預貯金があり、その預貯金が利息という収益を生む場合」等の場面が考えられます。
この問題について、実務的には、遺産から生じた収益は「遺産」ではないという理解を前提に、相続人全員がこれを遺産分割協議の対象とする旨合意すれば、遺産分割調停・審判の対象として構わないという取り扱いがされています。
逆に言うと、相続人全員がこれを遺産分割協議の対象とする旨に合意しなければ、遺産分割とは別に民事訴訟手続きで解決しなければなりません。
この点、上記の例でいくと、「遺産の中に株式があり、その株式が配当金という収益を生む場合」、「遺産の中に預貯金があり、その預貯金が利息という収益を生む場合」については、ほとんど相続開始後の配当金や利息について問題意識を持たずに分配していることも多いと思われますし、明示もしくは黙示的に遺産分割の対象とする合意があると解されることが多いと思います(当事務所が受任した事案においては、相続開始後の配当金や利息を別途民事訴訟において解決したことはありません)。
一方、「遺産の中に不動産があり、その不動産が賃料収入という収益を生む場合」については、収益がどの時点まで被相続人の債務の返済に充てられているのか等の争いが生じ、当事務所が受任した事案においても、遺産分割調停・審判の手続きとは別途、民事訴訟において解決がなされた事案があります。