少年付添人として目指していること
「少年事件」は、成人が受けることになる「刑事事件」と異なり、犯罪を犯した者を処罰することではなく、非行少年の更生を目的として行われるものです。
ですから、私たち弁護士が、少年付添人として活動するにあたっては、少年の更生のために、ご両親をはじめとした保護者、学校の先生、職場の上司、医師や保護司等、少年の更生に協力いただける方と連携し、少年の育成環境を整え、少年自身が自らの意思で更生していくお手伝いをし、その結果少年が社会に適合し非行を繰り返さないことを強く願いながら活動しております。
少年付添人とはどんなもの?
少年付添人もしくは付添人とは何でしょう?
少年付添人もしくは単に付添人ということもありますが、これは少年事件における弁護人のような役割を果たす者です。
弁護士を付添人にすることがほとんどですが、法律上、弁護士でない保護者も家庭裁判所の許可を受けて付添人となることができます。この付添人を選任するのは、少年本人及びその保護者です。
先ほども述べましたが、付添人の役割は、成年の刑事事件における弁護人の役割と類似しています。とくに、否認事件(非行事実を争う事件)においては少年に有利な事実の立証活動等、弁護人同様の活動を行います。
しかし、既に述べたように、少年事件は、成人が受ける刑事事件と異なり、少年の更生を目的としています。そこで、とくに自白事件(非行事実を争わない事件)においては、刑事事件の弁護人と同様の役割に加えて、少年の更生について、保護者や調査官と共に考え、環境を整えるための活動をするという役割が重要になってきます。
少年付添人の活動の概要(少年法の目的)
年付添人の活動について概要を述べる前に、少年法には第1条に少年法の目的が規定されていますのでそのことについて触れさせていただきます。
少年法1条には「この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。」と規定されています。
少年法1条の文言にも表れている通り、少年事件を通じて、本来実現されるべきなのは、少年が2度と非行を繰り返さないようにすること(少年の更生)です。少年に厳罰を科すことではないのです。
ですから、少年付添人は、少年に軽い処分が下されることだけを目指すべきではないのです。
少年事件においては、「少年院送致」「試験観察処分(最終的な処分ではないが)」「保護観察処分」等の処分があります。
そこで、少年付添人としては、例えば同じ「保護観察処分」という結果になったからといって、少年付添人として同じ役割を果たせたかというと必ずしもそうでないことがたくさんあるのです。
当然のことながら、少年付添人の果たす役割だけで非行が防げる等ということはほとんどないかもしれませんが、少年付添人が果たした役割によって、少年が更生に向けた環境を整えていけることもあるはずです。
付添人の役割の総論はそのくらいにして、具体的な活動としては、大きく分けて身柄の解放に向けた活動と審判に向けた活動があります。
まず、身柄の解放に向けた活動としては、勾留決定に対する準抗告や、観護措置決定に対する異議の申し立て等を行います。少年が勾留され、あるいは観護措置で少年鑑別所に入れられると、その期間学校を休まざるをえなくなります。
また、警察から学校へ連絡が行く場合もあります。そうすると、学校に非行行為があったことが伝わり、退学処分となることも考えられます。このような事態を避けるため、なるべく早期に少年の身柄を開放する必要があります。
次に、審判に向けた活動としては、調査官との面談や意見書の提出を行うことになります。
少年事件における審判においては、裁判官の下す結論に、調査官の意見がとても重視されています。そこで、付添人は調査官との面談により少年に対する処分意見の交換を行うことが重要です。
また、付添人としての独自の意見を裁判所に伝えることも不可欠です。