過払い金返還請求をする際に問題となる論点
1.取引の途中で完済がなされている場合(取引の分断がある場合)
取引の途中で完済がなされている場合、取引を完済時に分断があるとして、2つに分けて計算するのか、一連の取引として計算するのかという問題があります。(この問題に関しては、一連で計算をするほうが、過払い金返還請求をする方にとって有利になります。)
この問題については、完済前後の2つの取引が、基本契約が締結されていて、その基本契約に基づいてなされたものといえるのかということがポイントになります。
すなわち、カードを作って借り入れをするときに、基本契約をすることになりますが、それが完済時に終了して、再度の借入時に再度結びなおされているか、ということがポイントになるのです。
もっとも、最高裁判決は、1つの基本契約に基づく場合のように、法律上1個の連続した金銭消費貸借取引だけでなく、基本契約が終了し、新たな基本契約が締結されて、別の金銭消費貸借取引が始まった場合であっても、「事実上1個の連続した金銭消費貸借取引」であれば、なお過払金充当合意は失われず、一連計算することを認めています(最判平20年1月18日、民集62巻1号28頁)。
この一連計算の問題については、過払い金の額に大きく影響してくることがありますので、この問題が論点となる場合には、弁護士に依頼されることが依頼される方の利益にかなうといえると思います。
2.推定計算、冒頭ゼロ計算
現在の過払い金返還請求における証拠は、99%貸金業者から開示される取引履歴に依存しているといっても過言ではありません。
しかし、貸金業者が取引履歴の開示をしなかった場合、どのようにして過払い金返還請求をすればいいのでしょうか。
大手の消費者金融業者では、取引履歴の開示を故意にしないということは、現在ではほとんどないものと思われますが、それでもかなり古い取引の履歴についてはすでに廃棄されている可能性もあります。
そこで、取引履歴がない場合に、これまでの取引の経過を証明できるような証拠が一部でもあれば,その証拠をもとに取引の経過を推定してできるかぎり合理的に再現し,その推定した取引履歴を前提に、過払い金を請求することができます。
これを推定計算といい、推定計算を裁判所に認めてもらうためには、例えば、振込依頼書の一部仮名凝っている場合や一部だけでも取引履歴が開示されている場合はその一部から取引の状況が推定できる場合など、いろんなことが想定されますが、そのような主張をするのであれば、専門家である弁護士にご依頼されることを検討された方がいいと思います。
過払い金返還請求をすることによる信用情報への影響
2010年4月19日以前は、過払い金返還請求をすると、「契約見直し(コード71)」という情報が信用情報に登録されるという取り扱いがなされていました。
そして、この信用情報が登録されることが、その後の借り入れに影響するのではないかということが言われていました。
しかし、過払い金請求をするということが、本来信用情報に影響を及ぼすことが誤っていると考えられます。
そこで、2010年4月19日に、過払い金返還請求をしたことにより登録されていた「契約見直し」という情報は、登録されないこととなりました。
また、それまでに信用情報に登録されている「契約見直し」情報についても、削除されることとになりました。
この点、過払い金返還請求をする過程で、消費者金融としては、債務があるという把握をしている場合に(完済していないケースの場合)、一時的に「支払い停止」であるとして信用情報が登録されたりする可能性はあります。
また、過払い金が発生すると考えたが、計算してみると結果的に過払い金はなく、債務が残った場合には、「支払い停止」であるとして信用情報が登録されることがあります。
このような場合を除いて、過払い金返還請求をすることで、信用情報が登録され、今後の借り入れが不利になることは基本的にありません。