自己破産のデメリットについて
自己破産手続きは、免責(借金を返済する法的義務を免れる)を受けられる大きなメリットがありますが、デメリットもあります。
ただし、一般的にデメリットと誤解されている事も多く、きちんと理解しておく必要があります。
自己破産手続のデメリット
- (1)一定期間新規借り入れができなくなる(いわゆるブラックリスト)信用情報機関に登録されるため、クレジットカードを作ったり新規の借り入れ等が相当期間できなくなります。
- (2)換価できる資産は残せない。ローン残高が残っている場合、住宅や自動車等を手放さなければならなくなります。
- (3)破産手続き開始決定後免責手続きが終了するまで、一定の職業に就くことができない。例えば、保険外交員、警備員、宅地建物取引主任者、証券外務員などの資格を使った職業には就くことができません。
- (4)官報に破産の手続きをした日時と住所・氏名、手続きをした裁判所等が掲載される。自己破産の事実が公になります。もっとも、多くの方は官報を見る機会はまずないでしょう。
自己破産手続のデメリットと誤解されているもの
- (1)自己破産してしまうと、会社にそのことを申告しなければならず、会社を辞めなければいけなくなる自己破産をしても会社への申告義務などはなく、会社を辞める必要はありません。ただし資格制限にかかる職業(警備員など)で、破産管財事件となる場合には手続き期間中の資格が制限されます。
- (2)自己破産してしまうと、選挙権が剥奪されてしまう選挙権を制限されるのは、禁錮刑以上の刑で服役中の者や選挙違反等で禁錮刑以上の刑で執行猶予中の者などですが、自己破産者は選挙権の制限はありません。
- (3)自己破産をしてしまうと、戸籍に自己破産していることが記載されてしまう戸籍に自己破産の事実が掲載されることはありません。破産管財事件となる場合には、手続き期間中に本籍地の市役所の破産者名簿に記載されますが、免責許可の決定で復権し名簿から削除されます。
- (4)自己破産してしまうと、家財道具一式差し押さえられてしまう99万円までの現金や家財道具などは、原則として自己破産しても持ち続けることができる財産として認められています。(本来的自由財産と自由財産拡張基準)
自己破産をした場合の資格制限について
自己破産をしてしまったら、資格の制限があることはご存知でしょうか?まずは、どのような資格の制限があるかをみて、その資格制限がどの期間影響を及ぼすかについてみてみることにしましょう。
資格制限が生じる資格
まず、自己破産によってどのような資格に制限が生じるかについてですが、以下のような資格に影響を及ぼすことになります。
弁護士、公証人、司法書士、税理士、公認会計士、警備業者、警備員、宅地建物取引業者、宅地建物取扱主任者、建設業者、貸金業者生命保険募集人、損害保険代理店、等
成年後見人、未成年後見人、保佐人、補助人、成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人、遺言執行者、等
しかし、この破産免責の効果は、税金等の公租公課には及びません。すなわち、自己破産したとしても、税金の滞納分や健康保険の滞納保険料等は支払い義務が残ってしまうのです。
なお、株式会社の取締役について破産手続開始決定がなされると、会社と当該取締役との間の委任契約が法律上当然に終了してしまうので(会社法330条、民法653条2号)、取締役としての地位をいったんは失うことになります。
しかし、従前は存在していた取締役に就任することについての制限は撤廃されているため、破産手続開始決定を受けた後であればいつでも、当該取締役は、再度取締役として就任することができます。
資格制限の期間
次に、その資格制限がどの期間影響を及ぼすかについてですが、あくまで法律上の制限についてということになりますが、どの期間影響を受けるかは、「破産手続開始決定」から「免責決定」までの期間、ということになります。
すなわち、破産手続開始決定によって、資格制限の効果が発生するが、免責決定とともに、復権(破産法255条)によりその効果が消滅するのです。
開始決定から免責決定までの期間は、具体的なケースによることになりますが、同時廃止手続の場合にはまさに「破産手続開始決定」と「免責決定」は同時であり期間はなく、管財手続の場合には3ヶ月から1年程度かかることになります。
信用情報機関について
自己破産に限らず、債務整理や特定調停、個人再生を行うことにより、その情報が信用情報機関に登録されます。このことによりクレジットカードの新規作成や、金融機関からの借り入れが一定期間できなくなります。このことを、いわゆるブラックリストに載ると一般的に呼ばれますが、ブラックリストというものは存在しません。