自己破産 非免責債権

2021/06/12
自己破産 非免責債権

自己破産しても免責されない債務(非免責債権)

自己破産手続をすると、通常の借金については返済しなくてよくなります。このことを免責されるといいます。

しかし、様々な理由から以下の債権については自己破産手続によって免責されることはありません。すなわち、自己破産しても支払義務を免れることができない債務ということです。

これらの債権は非免責債権といわれ、破産法第253条1項に列挙されています。自己破産を検討するにあたって注意が必要になります。

  1. (1)滞納している税金、社会保険料等例えば、滞納している市県民税、所得税、消費税、自動車税、固定資産税、国民健康保険料、国民年金保険料等ということになります。
  2. (2)悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権「悪意で」加えた不法行為というのが、ポイントでいわゆる典型的な不法行為に基づく損害賠償請求権である、交通事故の損害賠償や浮気の慰謝料請求権などは含まれません。
    ここでいう「悪意」というのは、かなり限定的に考えられており、積極的に他人の権利を侵害して損害を与えようという意図、すなわち「害意」のようなものが働いている場合をいうと解釈されています。
    例えば,暴力によって他人に怪我を負わせたり、他人の物を盗んだり,騙し取ったり,横領したりした場合に限って「悪意」で加えた不法行為といえると考えられます。
  3. (3)故意や重い過失により加えた、人の生命や身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求具体的には、故意に暴力をふるって他人に怪我を負わせた場合の損害賠償債務、飲酒運転などの重大な過失により人身事故を起こして他人に怪我をさせた場合の損害賠償債務等。
  4. (4)夫婦間の協力・扶助の義務、婚姻費用分担の義務、子の監護に関する義務、扶養の義務、またこれらの義務に類する義務であって契約に基づくもの具体的には、未払いの婚姻費用、養育費等。
  5. (5)従業員へのお給料や預かり金具体的には、個人事業を営む方が雇用していた従業員の未払い給与、積立金などの預り金等。
  6. (6)破産者がその存在を知りながら、申立ての際に債権者名簿に記載しなかった債権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く)破産者が故意に(わざと)特定の債権者を債権者一覧表に記載しなかった場合(返済を続けたいために破産したことを知られては困るなどの事情からわざと債権者から除外した場合など)に限って,その除外された債権者からの請求権は、免責されなくなります。
    もっとも、破産者が故意に債権者を記載しなかった場合でも、債権者が破産者について破産手続開始決定があったことを知っていた場合は、免責されることになります。
  7. (7)罰金、科料等具体的には、罰金、過料、科料、刑事訴訟費用等。

滞納税金がある場合、自己破産手続きでどのように取り扱われるのか

個人事業主の方で、所得税・消費税の滞納や市県民税の滞納、国民健康保険や国民年金の滞納が大きな金額あり、自己破産によってそれらの滞納がどのようになるのか、ご心配の方もおられると思います。

まず、そもそも自己破産をする方は借金の返済をする義務がなくなる(破産法の用語でいうと「免責」を受けることができる)ことを目的として、手続をされる方がほとんどであると思います。

しかし、この破産免責の効果は、税金等の公租公課には及びません。すなわち、自己破産したとしても、税金の滞納分や健康保険の滞納保険料等は支払い義務が残ってしまうのです。

そして、この税金のうち、破産手続開始決定当時、納付期限が未到来のものと納付期限から1年間を経過していないものは「財団債権」といって、最も優先的に支払われるカテゴリーに分類されます(破産法148条1項3号)。この「財団債権」として取り扱われる租税債権の延滞税等は、本税と同様、「財団債権」となります。

また、破産手続開始決定後に、換価及び配当に関する費用に該当する税金は「財団債権」となり、それ以外のものは、「劣後的破産債権」といって配当にあたっては劣後的に取り扱われます。

さらに、国民健康保険料、国民年金保険料、厚生年金保険料、社会保険料、労働保険料などの公課についても、納期限によって「財団債権」と「優先的破産債権」が区別されることとなります。

なお、公共下水道料金や駐車場違反などの放置違反金についても、「滞納処分の例により徴収することができる」こととなっているため、公租公課と同様に、破産手続の中で優先的に弁済を受けることとなります。

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